匠ブログ

意匠(デザイン)に関するお話

1.コンテンポラリー・スタイル(モダン・スタイル)

モダンなデザインは、シンプルでありながらも機能美に満ちていて、とても清々しく気持ちのよいものです。でも一歩間違うと、非常な短命に陥り易い点に注意しなければなりません。

一例を挙げるならば、1980年代のバブル期には、『コンクリート打放し』が非常にもてはやされました。当時流行したトレンディードラマをはじめCMやニュース番組等のセットにも多用され、当然実際の住宅への応用も大流行りしました。しかし30年以上経過してみて、当時の断熱に対する知識不足とコンクリート自体の透水性等により、往年の清々しさは見る影も無く、すっかりみすぼらしくなってしまった建築物を散見するようになりました。

『時代の最先端デザイン』というものは、竣工したその瞬間が最先端なのであって、10年経過すれば単なる『10年前の流行』に成り下がってしまうのが必然です。特に現代のように流行の変遷が速い時代には、サスティナブル・ハウス(=価値の永続する住宅)の概念からは乖離していく一方です。この点を充分踏まえた上でデザインする必要があります。

さらに、建築現場の周辺環境との調和に関しても留意と配慮が必要です。過度に前衛的な建築物の出現により、周辺環境との違和を惹起してしまい、ストリート・スケープをはじめ住宅街そのものの資産価値の下落を招いてしまうことも起こり得るからです。

2.トラディショナル・スタイル(クラッシック・スタイル)

コンテンポラリーに比べ無難であるといえるだけでなく、トラッドにこだわったデザインは、古くなればなる程、重厚感と温もりを醸し出すようになり、結果として資産価値の永続性に長ずることになります。まさにサスティナブル・ハウスを具現化し易いのがトラッドです。

ただし、内装や生活スタイルに至るまでの懐古趣味を推奨している訳ではありませんので誤解なきよう。あくまでも外装デザインに関するお話です。

欧米では100年以上経過した家々が歴史的な街並を形成している風景に往々にして遭遇します。しかし意外なことに、内装は驚く程コンテンポラリーにリノベイションして活用している例が多々あります。

最近、日本でも函館市が、住宅の外装に関する規定を制定し、住宅街の醸成に意欲的に取り組んでいます。この規定により明治・大正期に建てられた見事な和洋折衷様式の洋館群が、今後も保存されることになりました。当時のデザインが、すっかり歴史ある街並を形成していることを尊重し、観光資源としても高く評価したあらわれです。

政府が『長期優良住宅制度』を施行したことからも推測出来るように、こういった流れは今後一層加速するであろうと思われます。つまり、30年程度で次々に建て替える時代は終り、これからはデザインも永く愛せるものが求められることでしょう。皮肉な事に、トラディショナルなデザインが、流行の最先端を担うことになるかもしれません。


デザイナー 小野清一郎 2012年2月1日 デザインについて一覧

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