匠ブログ

ローカルスタンダードな建材の採用

 前回、資産価値を持続させる要素として、次の六つの原則を挙げましたが、今回は6.のローカルスタンダードな建材について書こうと思います。

1. トラディショナル・スタイル(クラシック・スタイル)の踏襲

2. フレキシブルな間取り

3. 3m以上の天井高

4. 2.4m以上の開口(扉・窓等)高

5. ファサードの絶対的な確保

6. ローカルスタンダードな建材の採用

ローカルスタンダードな建材とは、建築現場周辺で昔から使用され、人々に慣れ親しまれている建材のことです。特にその地域特有の産出物を利用した建材は歴史的にも貴重で、その地域を象徴するべきマストアイテムであると考えています。

例えば、イギリスのコッツウォルド地方では、ライムストーンと呼ばれる石灰岩が産出されるため、古来より建築物の外壁に多 用されてきました。この石は『コッツウォルズストーン』とも呼ばれるくらい特徴的な黄色みをしています。したがって、この石で築かれた街並は、全体が黄色 みを帯びた景観を形成していて、『蜂蜜色の街』とも呼ばれています。もしあなたがこの街に更地を購入する機会を得たとしたら、どのような外壁材を選択しま すか? 日本で流行している左のようなモダンなサイディングを使用することは、到底考えられませんね。

〈コッツウォルドの街並〉 〈モダンサイディング〉

オランダのアムステルダムは、何世紀にもわたる煉瓦の風合いが、美しい街並を創造していることで有名です。面白いのは江戸 時代の日本と同様、運河に面した家々に対し間口の広さに応じて課税する『間口税』が存在したため、日本の長屋に似た鰻の寝床のような奥に細長い家々が連 なっている光景です。もし、この街の一角に長屋用の細長い土地を得たとしたら、あなたは安藤忠雄氏に『住吉の長屋』のようなコンクリート打ちっ放しの建築 物設計を依頼しますか? 勿論答えはNOにちがいありません。

〈アムステルダムの街並〉 〈住吉の長屋〉

舞台は海外の街だけではありません。島根県の津和野は『石洲瓦』の赤い甍波で有名です。島根県は石州瓦の導入に補助金を設 け、地元産業と歴史的景観を保護する取組みを行っています。津和野に家を建てるなら、補助金が無くても石州瓦を採用することがもっとも正しい選択であるこ とは明らかです。

〈石州瓦の甍波〉 〈津和野の散策道〉

埼玉県深谷市は、以前紹介した渋沢栄一の生誕地で、良質な煉瓦の産地としても有名です。現在、市を挙げて煉瓦建築の普及に 取り組んでいます。街の玄関であるJR深谷駅は見事な煉瓦建築で、渋沢が活躍した時代の浪漫すら彷彿とさせます。現在、弊社ではこの深谷市にてとある物件 を手掛けています。いずれ当HPにて紹介したいと思います。

〈JR深谷駅〉 〈深谷市のポスター〉


デザイナー 小野清一郎 2013年5月1日 デザインについて一覧

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