匠ブログ

屋根材について

先月は外壁材がもたらすストリートスケープの統一感についてお話ししましたが、統一感という点では外壁より大きな影響力を持つ部材が有ります。それは屋根材です。
下図は、前月でも登場した、街の統一感を一切考慮していない家々の模式図です。

パターンA

外壁材の種類は、左から暖色系タイル、緑色のラップサイディング、ベージュのスタッコ、赤煉瓦、コンクリート打ち放しと し、屋根材は、同じく左から灰色のカラーベスト、橙色の洋瓦、赤い板金屋根、黒い和瓦、陸屋根(平らな屋根のこと)で屋上防水のみとします。今回は着色し てみましたので、渾沌として支離滅裂な状況がさらに強調されました。毎度申し上げるとおり、悲しい現実ではありますが、日本の住宅街の多くがこのような状 態です。

そこで、この街では屋根材に関する建築規約を施行したとします。規約内容は、この土地で古くから使用されている黒い和瓦をどの家も使用しなければならない、というものです。街の景観は下図Bのように変貌します。

パターンB

連続感が生まれました。外壁のテクスチャーや色調がバラバラでも、家の頭部である屋根材が統一されると、それだけでこのコ ミュニティーの一体化が実現します。そして右端の陸屋根の家だけがこの景観にそぐわない、異質なものであることが分かります。したがって、屋根の材料と色 調を規定するだけでなく、屋根には勾配をもたせて、規定する材料を必ず使用できるように規制しなければなりません。
有名な高級住宅街でも、「勾配屋根」を義務付けている所が有るには有りますが、屋根材までキッチリ規定しなければ、片手落ちで形骸化した絵の餅に過ぎま せん。コミュニティ全体の資産価値向上を目指すのであれば、屋根材の持つ影響力がこれほどまでに大きいということを、しっかり認識しなければなりません。


デザイナー 小野清一郎 2013年7月1日 デザインについて一覧

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