匠ブログ

琉球赤瓦

先月は屋根材のもつ影響力について触れましたが、異国情緒溢れる沖縄県でもそこに着目し、文化的で歴史的なアイデンティティの継承に県を挙げて力を注いでいます。
沖縄県を旅すると、近代的なデザインの新しい施設にも琉球赤瓦を導入することで、周囲への調和に配慮しつつ昔ながらの街並や景観を保全していることに目を見張ります。この努力が、いまだに沖縄県に異国情緒が漂い、独特な雰囲気を醸し出している源流になっています。
最初の画像は、沖縄本島を南北に走る高速道路内にある伊芸サービスエリアのメイン棟です。

パターンA

日本中のどこにでも見られるような売店入口ですが、昔ながらの琉球赤瓦で葺き上げ、ファサードの真中にはシーサーもあし らっています。シーサーは琉球古来の魔除けの象徴ですので、正面入口の自動ドアの真上に配しているわけです。伝統的な因習に則った設計であることがわかり ます。自動ドアやアルミサッシのような新しい建具に彩られた現代建築に昔ながらの瓦を使用しても、ミスマッチの妙が感じられ、すんなり受け入れられること が分かります。

次の画像は、石垣島のフサキリゾートヴィレッジの様子ですが、トラディショナルな建材である赤瓦がこちらも見事に現代のリ ゾートコッテージに溶け込んでいます。全体的な設計がモダンなので、カジュアル感やリゾート感が感じられるのですが、そこにトラッドな瓦を使用することで 高級感や重厚感を加えることに成功しています。

パターンB

最後は、宮古島の空の玄関である宮古空港です。

パターンB

先程までの二例と比べ、さらに前衛的で思い切った造形ですが、そこに伝統的な赤瓦を使用しても何ら違和感が感じられないの が不思議です。それどころか。アバンギャルドなデザインは、下手をすると攻撃的な印象を生むことが有るのですが、伝統的な屋根材を導入することで、すっか り角が取れた柔和な印象さえ感じられる仕上がりになっています。

いかがですか、屋根材の選択が、全体の印象にとても重要なことが御理解いただけたでしょうか。そして以前お話ししたよう に、ローカルスタンダードな屋根材は、その地域の一体感や連帯感を生み、地域性、歴史性、民族性、文化性、諸々の要素を雄弁に語ってくれます。是非、お宅 の御近所の屋根屋根を観察してみてください。


デザイナー 小野清一郎 2013年8月1日 デザインについて一覧

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