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横浜市神奈川区の細田歯科医院様 3
今月も横浜市神奈川区の細田歯科医院様の事例報告を続けます。先月は、内装設計についての問題点を酷く非難させていただきましたが、今月はさらに論調を強めたいと思います。(笑)
建築デザイナーとしての私の信念は、ファサードがその建築物の命である、ということです。ファサードとはフランス語で「顔:フェース」のこと。つまり建築物の「顔」ということになります。人間だけでなくあらゆる構造体は「顔」がその象徴であることに異論はないと思いますが、さて、今回の物件について、そのファサードをみていただきましょう。
この物件では、診療室がビルの2階に入居しており、1階はラーメン屋さんが入居しています。診療室への入口(玄関)が白いシャッターで閉ざされたファサードということになり、提灯が下がっている部分がラーメン屋さんのファサードです。
診療室のファサード(玄関)には、青い囲み(ケーシング)が導入されましたが、ここでデザイナーはやってはいけないミスを犯しています。それは、意匠に凝るつもりだったのでしょうが、シャッターの左側と上側の二方しか囲まなかったことです。そして右側には細い横桟を3つほど追加し、オリジナルデザインとして終わらせています。
しかし、このことが右側のラーメン屋さんとの境界を曖昧にしてしまい、分離感を著しく弱めてしまったのです。せめて右側と左側の部材を入れ替えておくほうが良かったことでしょう。
結果として、人通りにあまり訴求することができず、住民への周知が弱くなっていたようです。このケーシングの問題は、正統的な三方廻しという手法をバッサリ切り捨て、斬新さを狙ったのでしょうが、完全に裏目に出てしまいました。ラーメン屋さんの押し出しに完敗しています。これでは商業施設としての意匠には不合格と言わざるを得ません。そして斬新さが不安定感や雑然感を醸し出してしまいました。
意匠性の醜悪さだけでなく機能性にも、隣の商業施設との分離・独立といった大事な機能を欠いてしまいました。
そして機能性についてもう一つ欠陥があることを指摘させていただきます。こちらを御覧ください。
道路からの段差が著しく、駐車場に使用する簡易スロープを設置してごまかしています。ここまで手抜き工事をされると、やれやれ、といった感じです。段差をよく観察すると、隣のラーメン屋さんよりも大きくなっていることが分かります。そしてどうしても理解できないのが、なぜ、自動車用のスロープを設置したのでしょうか・・・。深い謎です。否、不快な謎です。人が歩行する場所なので、せめて、踏み台にすべきではないでしょうか。
私は、建築の三要素として「意匠・機能・性能」を定義しています。今回の事例では、建築の命とも言えるファサードに、「意匠」と「機能」の二つの要素において致命的な欠陥が生じていると結論づけました。来月に続きます。
デザイナー 小野清一郎 2020年5月1日 リノベーションについて一覧