リノベーションについて
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横浜市歯科医師会様の受付工事 2
先月に全体的な問題点を御覧いただきましたが、今月は細部の問題点を確認したいと思います。次の3枚の画像は、可動式のパネルに滑車を固定する金具(ブラケット)です。
本来、この手の金物類が露出することは好ましくありません。なおかつ、金物とパネルはネジ止めされているのですが、接着剤で補強されています。この接着剤透明パネルを透けて見えています。この画像は患者さんがいらっしゃる待合室側から撮影したものですが、こういった見苦しい糊付け痕は、
見えない側、つまり受付のスタッフがいらっしゃる側へ裏返しに向ける方が仕上がりが美しいものです。
そして最後の画像は、可動式のパネルの振れ止めの部分ですが、こちらも透明のパネルに接着しただけですので、いくら透明な材料を使用してもやはり見苦しい感じが否めません。
病院の受付という特殊な現場では、このように透明な建材を多用することが多いのですが、透明な建材だからこそ、細部の「アラ」が目立ってしまうことを十分に考慮して設計しなくてはなりません。
これらの問題点を踏まえ、来月は横浜市歯科医師会様の理事様らにプレゼンテーションしたデザインについて紹介させていただきます。
デザイナー 小野清一郎 2016年4月1日
横浜市歯科医師会様の受付工事 3
先月まで紹介した問題点を解決するために、私はパーテーションを天井までめいいっぱい延長するプランを提示しました。役員様方へのプレゼン時に使用したスライドがこちらです。
こうすることで横方向のフレームワークは天井とカウンターと一体化し、一気に目立たなくなります。
次に頭を絞ったのが、フレームワークに使用する部材です。これらは12ミリ幅の非常に細い枠材を導入しました。12ミリという極細の部材で畳1畳程のアクリル板を支えなければならないので、場所によっては奥行き方向に2本束ねて使用することにしました。水平方向の断面図がこちらです。
そして、最後に原状との比較を提示し、竣工後の様子をイメージしていただきました。そのスライドがこちらです。
本件は、プレゼンテーションが評価され、工事を受注することができました。来月は、竣工の様子を紹介いたします。
デザイナー 小野清一郎 2016年5月1日
横浜市歯科医師会様の受付工事4
今月はいよいよ竣工の様子をお伝えします。まずは全体像がこちらです。
真ん中のパートはスライドさせると、待合室から完全に遮断することができます。
レジの前はグラディエーション・フィルムを採用し、光を取り込んで解放感を維持しつつ、防犯上の配慮もしました。
そして、今回の設計のキモは、複雑な構造物をすべて、折り上げ天井の段差を利用して、隠蔽してしまったことです。その様子をアップで捉えた画像がこちらです。
右の画像ではスライディング部を受け止める戸車がチラッと映っています。工事前と工事の様子を比較してみましょう。
もはや多くを語らずとも、御理解いただけることと思います。細かいところにこだわれば、結果は必ず現れます。それこそが、私たちがネジ一本に至るまで部材にこだわってデザインしている理由なのです。
デザイナー 小野清一郎 2016年6月1日
事務用キャビネット工事 1
先月は病院様の受付カウンター工事の様子をお伝えしましたが、別の医院様のカウンセリングルームの収納について御相談を頂戴いたしました。
こちらの医院様は都内の住宅地にあり、現調に伺った際も非常に患者さんが沢山お越しになられていました。こちらの医院様の特徴は、患者さんとのカウンセリングをしっかりやっていることだそうで、その肝心のカウンセリングルームをスッキリさせたい、との御要望が寄せられました。
まずは原状を確認してみましょう。
既成品の収納ボックスを羅列した感じで、確かに雑然としていますね。
特にここが問題でした。おびただしいタコ足配線です。
これだけ配線が入り組むと埃が集積しやすく、自然発火する可能性が高まります。見た目以上に、防災上も問題が大きいですね。
さて、課題のリスティングは終わりました。ここからデザインと機能性を高めて、新しい収納キャビネットをデザインしていくことになりました。来月に続きます。
デザイナー 小野清一郎 2016年7月1日
事務用キャビネット工事 2
いよいよ工事です。ポイントは雑然としたタコ足配線をすっきりさせることです。今回、キャビネットの引出しの奥行をやや短縮し、その奥に配線を設置できるように工夫しました。
外枠の設置が完了しました。台上に置いているのは市販のコンセント(テーブルタップ)です。これをキャビネット内に増設することで、接続部を隠蔽しようという目論見です。
あれだけ雑然としていた配線は全てキャビネット内部に増設したテーブルタップにて隠蔽されて、整頓されました。キャビネット内なので静電気による埃の集積も減らせることが期待できます。
面材のコーディネートも狙い通りです。ちょっとした工事でしたが、寸法精度等にもこだわったので、デザイナーとしても竣工時は充実した気分を味わえました。
この工事を御縁に、こちらの医院様からはカルテのキャビネットの工事も御発注いただきました。御用命頂き、誠にありがとうございました。そちらの報告はまたいずれ披露したいと思います。
デザイナー 小野清一郎 2016年8月1日
買付けツアーのその後1
皆様、新年、明けましておめでとうございます。昨年は熊本地震をはじめ多くの自然災害に翻弄された一年でした。本年が皆様にとって穏やかで幸多い年であることを祈念いたします。
さて、昨年の夏から連載しています「建材買付けツアー」の件ですが、いよいよ今年はそのプロジェクトが現場着工いたします。今月からはブログのタイトルを「買付けツアーのその後」と題して、新たなシリーズを展開しようと思います。今月はその第一回目となります。どうぞ竣工までお付き合いください。
今回のプロジェクトは、横浜市の歯科医院様の新築工事になります。昨年中に弊社にて基本設計を終え、北米系の輸入建材の調達のためにお施主様である院長先生と渡米したことは、昨年のブログ9月号から連載したとおりです。
現場は横浜市の西部に位置する泉区内の住宅地と農地の境界部で、こちらが現況です。平坦な更地で条件は良さそうですが、奥に向かって先細る異形であることが大きな特徴です。
こちらは航空写真です。赤い線で囲んだ部分が現地です。北側に接道し、南側に向かって、つまり土地の奥の方に向かって先細っていく様子が分かります。異形な土地ではありますが、西側には小学校の正門があり、登下校時には、この医院さんの前を小学生たちが沢山往来することがイメージできます。医療機関としての立地条件は、非常に良好と思われます。ここに周囲の環境に調和しつつも、上品で清潔感のある設計をすることで集客性を高めることが私に課せられたミッションです。
求積図がこちらです。56.78坪と記載されています。戸建ての商業施設としては十分な面積ですが、やはり地型が異形なことが懸念材料です。来月は設計についてお伝えしたいと思います。
デザイナー 小野清一郎 2017年1月1日
買付けツアーのその後2
横浜市泉区の歯科医院新築物件につき、今月は設計についてお話ししたいと思います。
この土地に対して他の設計事務所から提示されたのが次の図面です。
歯科医療用の診療台が3台描かれていますが、お施主様の御希望は4台とのことでした。
また、駐車台数が、患者さん用に普通車3台と小型車1台、スタッフさん用に普通車1台と小型車1台、そして駐輪スペースという設計でしたが、お施主様の希望は、患者さん用に普通車用のスペースを4台とスタッフさん用に小型車用でもよいので3台分を確保して欲しいというものでした。
結局、この設計事務所とは相性が合わず、弊社に御依頼されることとなりました。が、それにしてもこの設計にはデザイナーの私も閉口いたしました。動線とは呼べない代物の複雑で使い勝手の悪そうな部屋割り、醜悪なエンバイロメント(外壁周囲の形状)、土地形状の活用度が著しく低い建物配置などなど、およそ「設計」と呼ぶにはお粗末過ぎるものだからです。醜悪な設計にお悩みのお施主様とこれまで多数お目にかかってきましたが、これほどまでに酷い設計は本当に久方ぶりでした。これでも地元では名の知れた設計事務所さんのお仕事ですので、本当に悲しくなりました。
結局私は、ゾーニングからゼロベースで徹底的にやり直し、次のようなプランを提示させていただきました。内部の設計はまだ公開いたしませんが、診療台を4台収めることに成功いたしましたし、駐車台数も患者さん用に普通乗用車5台分、スタッフさん用に普通乗用車3台分、そして駐輪スペースも当然確保し、お施主様の御希望以上の台数確保を図りました。
また肝心のデザインですが、御覧のとおりエンバイロメントはシンプルな主棟を中心とし、オクタゴニアルタワーの袖棟をアクセントで接続させるビクトリアンスタイルを導入いたしました。このタワーの形状により今回の最大の問題だった土地の異形性を干渉することを意図しました。結果として、このようにスペース有効性を格段に向上させることに成功いたしました。
いよいよ来月から着工の様子をお伝えしていく予定です。
デザイナー 小野清一郎 2017年2月1日
買付けツアーのその後3
横浜市泉区の歯科医院新築物件ですが、先日、地鎮祭が行われました。祭壇の様子がこちらですが、既に地縄が張り終わり、建物の外形が表示されています。
通りからの様子がこちらです。いよいよ、という感じで、設計者の私も夢が膨らみました。
土地全面に神主様がお清めの塩を散布してくださり、無事、地鎮祭は終了しました。
来月は基礎工事の様子が伝えられると思います。
デザイナー 小野清一郎 2017年3月1日
買付けツアーのその後4
今月は基礎の打設前の様子を紹介いたします。
最近はフーティンのある布基礎をすっかり見なくなりました。今回もベタ基礎が採用されました。まずは捨てコンを流して、防湿シートを敷きます。
続いて立ち上がりの型枠を組みます。
現場には鉄筋もすでに納入されています。
鉄筋を組んだ後にいよいよ打設ということになります。来月は打設後の様子を紹介する予定です。
デザイナー 小野清一郎 2017年4月1日
買付けツアーのその後 5
今月は基礎を打設する様子を紹介いたします。先月、底盤の様子は紹介していますので、今月は立ち上がりの部分の打設をお示しします。
まずは型枠を組み立てた様子です。
その後、生コンを流し込んで打設します。英語ではこの工程をキャスト(cast)と表現されますが、流体状の原材料を型の中へ流し込む作業は一様にこう呼ばれます。金属加工の「鋳造」も「キャスト」と呼ばれますが、私が最初にこの言葉を知ったのは小学生の頃で、マジンガーZの玩具である「超合金シリーズ」がデビューした際に、「ダイキャスト製」という宣伝文句を耳にした時でした。ダイキャストとは、キャスト時に人為的に加圧をすることで、型の再現精度を高める手法のことだそうです。
そもそもキャストとは「投げ入れる」とか「放り込む」といった意味だそうで、マジンガーZを卒業した中学生の私が次にはまったのが「釣りキチ三平」でした。この漫画でもルアーフィッシングやフライフィッシングで疑似餌を漁場へ投げ込む動作を「キャスト」とか「キャスティング」と表現されていました。
その後、大学から社会人へと移行し、「鋳造のキャスト」や「コンクリート打設のキャスト」を仕事で常態的に扱うようにより、私の人生そのもののが「キャスト」界に放り込まれたような気がしている今日この頃です。
余談が長くなりましたが、こちらがキャスト後に型枠を撤去した様子です。
とうとう基礎が完成しました。
この上にこれから何十年という長い年月、お施主様とご家族、そしてスタッフの方々やここを利用される患者さんや地域の皆さんの生活の営みが展開されます。それを支える文字どおり「生活の基礎」であることに思いを馳せると、設計担当者としては毎度のことながら胸に込み上げてくるものがあります。
こちらが前面道路から眺めた様子です。
「どうかしっかり支えて欲しい。」と祈りを捧げて、現場を後にしました。来月から木工事の様子を紹介していきたいと思います。
デザイナー 小野清一郎 2017年5月1日
買付けツアーのその後 6
先月は基礎のお話をしましたので、今月は土台のお話です。
土台は、基礎と木造の構造体(建物本体)の間に介在する木材のことです。一般的には基礎のことを「土台」と呼称して比喩表現に利用されたりしますが、正しくは基礎に接する木材のことを指します。
基礎は、古くは石材でしたが現在は鉄筋コンクリート(RC)で構成されます。基礎は土中の水分と直接接しているため、木材より水に強い建材として石材やRCが採用されます。これらの建材は水に強いとはいっても若干の吸水性があり、絶えず水を含んでいる状態になります。そこに通常の木材を土台として緊結してしまうと、その木材はいずれ腐敗してしまいます。
そこで、土台に使う木材はヒノキ等の水に強い木材が採用され、さらに不朽性を高めるための薬剤がしっかり浸透加工された状態になっています。
では現場の様子を紹介いたしましょう。
まずは基礎の周囲から躯体を建造するための足場を設置します。
足場ができたら、いよいよ土台を設置します。その様子がこちらです。
先程、土台は湿った基礎と接するので耐水性の高い木材を使用するとお伝えしましたが、現在はさらに万全の湿気対策として基礎と土台の間に「基礎パッキン」と呼ばれるスリット状の樹脂材料を介在させます。
基礎パッキンが世に出るまでは基礎に床下の湿気対策用の通気口を設置していました。以前の家には次の画像のような小窓が基礎の周囲についていたのを御存知ですか。
さらに古い日本の古民家などでは「縁の下」と称し、石の基礎の上に床を浮くように貼り、床下は外部とツーツーの状態でした。床の高さをさらに上げたものが正倉院のような高床式建築ということになります。
日本の高温多湿な気候下にて、いかに地面からの湿気を逃し乾燥させるかが、家の耐久性には極めて重要です。そういった環境下での技術革新により、現在は基礎パッキン法が主流となりました。
とうとう土台の設置が完了しました。
来月からは躯体の工事に入ります。
デザイナー 小野清一郎 2017年6月1日
買付けツアーのその後7
今月からいよいよ躯体の工事を紹介する予定でした。ところが、工務店さんの都合により、着工が遅れてしまいました。そのため、昨年の夏にアメリカで買い付けた建材が、上棟する前に先に現場に届いてしまいました。
今回の連載のタイトルが「買い付けツアーのその後」ですが、その買い付けた建材を満載したコンテナがトラックに積載されて到着です。中の空気はオレゴン州ポートランドの空気です。
扉を開けて中の資材を運び出します。
このような長尺物は空輸では無理です。海運であれば、そのまま輸入できます。
大方、出し終えました。最後の荷物は最も重い玄関ドアです。作業員さん達、お疲れ様です。
本来であれば、上棟しているはずでしたので、建物内に収納できたのですが、御覧のとおり、躯体が見着工です。現場監督らが保管について打ち合わせています。結局、近傍の倉庫へ移動して保管し、必要な物ごとに個別に再搬入することになりました。
みなさん、大変お疲れ様でした。
来月からは、本当に躯体工事の紹介に入ります。とんだハプニングの今月でした。
デザイナー 小野清一郎 2017年7月1日