リノベーションについて

買付けツアーのその後8

 今月からは正真正銘、躯体工事の紹介をさせていただきます。(笑)

 ツーバイフォーのよう木造枠組壁工法は在来軸組工法とは異なる、とても特徴的な建て方をします。古くはバルーン工法と呼ばれ、次のような作業で建てました。

 あらかじめ平地でハシゴ状の枠を作り、さらに壁となる板を貼り付けておきます。
 そして、屋根側になる一端にロープを数本くくりつけ、大人数で一斉に綱引きして垂直に立ち上げるのです。こうすることで一気に2階までの外壁が立ち上がることになります。
 この作業を四方同時に行えば、あっという間に建物が上棟するわけです。バルーン工法と呼ばれるのは、その様子があたかも巨大な風船を膨らませたように見えるからだと言われています。

 このバルーン工法の実際の様子を現在も見ることができます。それはハリソン・フォード主演の映画、「刑事ジョンブック/目撃者」という映画の中の世界でのお話です。
 映画の中ではアーミッシュの村に迷い込んだハリソン演じる刑事が、村人達と協働で家を建てるシーンがあります。みんなで一斉に綱引きし、壁を立ち上げていくシーンがリアルに描かれています。ぜひ、御興味ある読者の方は、レンタルビデオで鑑賞してみてください。

 さてここで余談ですが、実はハリソン・フォード自身がツーバイフォーの大工であることを御存知ですか?
 若かりし頃の彼は、ハリウッド関係者の自宅工事などを請け負う大工さんだったのですが、ある日、高名な映画会社の重役宅を工事している際に、そのお施主様からスカウトされ俳優へ転向したというキャリアがあります。
 この映画ジョンブックでも、バルーン工法のシーンは自ら監修とテクニカルアドバイザーを勤めたそうです。
 少し前に彼のドキュメンタリーを見る機会があったのですが、相変わらず御自宅のリノベーションは自分で日曜大工をしているそうです。番組では彼が仕上げた自宅のキッチンを紹介していましたが、それはそれは素晴らしい仕上がりでした。
 二枚目で腕のいい大工さんなんて、本当にかっこいいですね。

 話が長くなりました。ツーバイの話に戻りましょう。創世記にバルーン工法と呼ばれたものの、その後、設計の多様化や壁を作る平地の確保が都心部では困難である等の問題により、1階ごとに建てていく工法へと変化していきました。
 まず1階の床を作り、その床の上で1階の壁を組み、立ち上げます。次に2階の床を作り、その床の上で2階の壁を組み、立ち上げるといった具合に、狭小地でも施工が可能な段階式にしたのです。
 この工法は、各階の床上で工事が進められることから、プラットフォーム工法と呼ばれました。現在のツーバイフォーはすべてこのプラットフォーム工法ということになります。

 では、今回の物件で見てみましょう。まずは土台の上に1階の床を張ります。これが1階のプラットフォームとなります。

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 プラットフォームが完成しました。基礎と同じ形状に完成しています。

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 1階の壁を作る作業は、このステージの上で展開されます。
 来月は、完成したプラットフォームを活用したツーバイフォーの醍醐味をお伝えしたいと思います。


デザイナー 小野清一郎 2017年8月1日


買付けツアーのその後 9

 先月はプラットフォームができるまでをお伝えしました。プラットフォームができれば、あとはその上でスタッド(柱)を組んで壁を作っていくわけですが、その方法も現場で組んでいく方法と、工場であらかじめ組んでおいてモジュール化し、現場でそれらを接合する方法の2つの工法があります。
 今回は工期の短縮のために工場での製作を採用しました。したがって、現場ではあっという間に上棟してしまいます。私が現場に到着した時には、もうすっかり完成しておりました。

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 内部の様子はこちらです。まずは1階から。

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 そしてこちらが2階。

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 さらにこちらが小屋裏、つまり3階です。

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ツーバイは壁構造なので、余計な梁等を使いません。屋根裏も空間として利用できます。屋根裏のことを英語ではアティック(Attick)といいます。アメリカの家は2階までで十分広いので、日本の様に小屋裏を居住スペースに利用する必要はなく、もっぱら収納や物置として利用しています。ビリー・ジョエルのアルバムに「SONGS IN THE ATTICK」という作品があります。「小屋裏の物置に仕舞い込んだ曲達」という意味で、往年の楽曲をライブで演奏したものです。物置なので電気も引いていないのでしょう。ジャケットでは、ビリー・ジョエルが懐中電灯で室内を照らしている様子が描かれています。

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 でも日本では、小屋裏はれっきとした3階の居住スペース、しかも子供部屋として活用することが多いので、「SONGS IN THE ATTICK」と言われると、「子供達が今夢中で聴いている流行歌」をイメージしてしまいます。アメリカ人と日本人では、Attick=小屋裏に対するイメージに大きな違いがありそうです。


デザイナー 小野清一郎 2017年9月1日


買付けツアーのその後 10

 先月、あっという間に上棟しましたので、今月は外部の防水工事について紹介します。
 まずは、ルーフィングといって、屋根の裏地となる防水シートを貼ります。

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 次に外壁の開口部を閉鎖していきます。窓を取り付けます。

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 そして玄関扉を取り付けます。

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 最後に外壁全体を「透湿防水シート」というシートで覆います。透湿防水シートは、室内の余分な湿気を通過させることができますが、外部からの水滴は通さない構造になっています。
 最近は「通気工法」といって、外壁の下地材と仕上材を密着させず、通気層という空間を介在させる施工法が主流です。当物件でも通気工法が採用されました。この場合、透湿防水シートの上に「通気胴縁(つうきどうぶち)」というスペーサーを一定間隔で留めていきます。その上に仕上材を貼ることで、仕上材は通気胴縁の厚さ分だけ下地材から浮いた(離れた)状態で固定されます。
 仕上材と下地材との間隙が通気層で、空気は自由に出入りできるようにしておきます。万が一、雨水が仕上材を通過しても、この通気層があることで乾燥され、外壁の下地を濡らさずに済むということがこの工法のメリットです。

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来月は内部の工事の模様をお伝えします。


デザイナー 小野清一郎 2017年10月1日


買付けツアーのその後 11

 今月は内装(下地)工事の様子です。壁と天井に石膏ボードをひたすら貼っていきます。外壁には断熱材を装填してから石膏ボードを貼っていきます。

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 2階の吹抜けに臨む部分はアーチで開放し、デッキとしました。

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  デッキの手すりです。手すりを支える小柱をバラスターといい、このような仕様をバラストレードと呼びます。

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床の仕上げ材も貼り込んでいきますが、工事中汚れたり傷つけぬよう、その上に養生用のボードをさらに上貼りします。

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 下地ができましたので、来月は内装の造作作業を紹介します。


デザイナー 小野清一郎 2017年11月1日


買付けツアーのその後 12

 今年のブログは今号が最後となります。一年経つのは本当に早いものです。皆様の2017年はいかがでしたか。
 さて、内装の壁下地ができたので、いろいろな造作材を取り付けていきます。こちらは廻り縁という天井と壁の接合部分に貼っていく材料です。英語ではCrownといいます。部屋をぐるっと一周すると冠状になるからでしょう。
 なお、床と壁の接合部に取り付ける部材を巾木といいますが、こちらは英語ではBaseboardと呼びます。

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 扉等の建具を設置した周囲には額縁を廻します。英語ではCasingといいます。外側をケースで覆うという意味です。

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 ミニキッチン周囲の壁にはキッチンパネルを貼り付けます。換気扇等の設備の下地も準備していきます。

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 廻り縁、額縁、巾木などのモールディング材と建具の取付が完了すると、次は塗装工程に入ります。

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 今回はペンキ仕上げがメインですが、2階のデッキの手すりだけはオイルステインで仕上げました。

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 また、床の仕上げはフローリングをメインに採用しましたが、1階の患者様用トイレは、タイル仕上げとしました。真ん中の円形の飾りタイルをメダリオンといいます。非常に高級感が出ますね。

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 来月は2018年最初のブログとなります。外部の作業を紹介したいと思います。


デザイナー 小野清一郎 2017年12月1日


買付けツアーのその後 13

 新年、明けましておめでとうございます。今年も皆様にとって素敵な1年でありますようお祈りしております。
 さて当ブログは、今年も例年どおり徒然なるままに皆様へ建築についての弊社のポリシーをお伝えしていこうと思います。どうぞお付き合いください。
 本年最初の記事は、外壁工事の続きです。袖棟の部分はブリック仕上げとしました。乾式工法といってレールにブリックタイルを這わせていきます。

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 綺麗に這わせ終わりました。屋根は私の大好きな和瓦で仕上げます。こうすることで明治建築のような仕上がりになり、日本の風土にもよく調和できるのです。

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 ブリックとブリックの間にモルタルで目地を入れて貼り上がりです。

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 次に主棟の方ですが、こちらはラップサイディングで仕上げます。

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 綺麗に貼り終わりました。今回の物件ではブリックとラップサイディングの混合仕上げ及び和瓦仕上げとしてメリハリを演出しました。また、両隣のお宅の外壁色を利用することで3軒の連続性と一体性を保ちました。ブリックは左隣のお宅の外壁と同調し、ラップサイディングの色調は右隣の倉庫の外壁に近づけました。こうすることで左右の建築物の色調の差異を中和し、既存環境に違和感のないすっきりとしたストリートスケープを造成することができるのです。また、屋根の和瓦はこの地域一帯に調和させることを意図しています。

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 来月は内装の仕上げ工事に戻りたいと思います。


デザイナー 小野清一郎 2018年1月1日


買付けツアーのその後 14

 今月は内装仕上げの様子をお伝えします。
 幅木、廻り縁、額縁等の役物の塗装を済ませたら、壁紙を貼っていきます。

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 次の画像は、特徴的な2階の吹き抜け部分です。左側の壁の白い部分は、プロジェクター投影用のスクリーン仕様の壁紙です。患者さんへのコンサルテーションやスタッフさんらとのカンファレンスをする際に画像を投影できるように施工しました。

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 次の画像は、その吹き抜けから階下の玄関ホールを見下ろした様子です。

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 逆に玄関ホールから2階のカンファレンスルームを見上げた様子がこちらです。

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 1階の患者さん用トイレの床はタイルで仕上げました。メダリオンという装飾用の特殊タイルを導入しています。高級感がぐんと高まります。

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 待合室の天井はVault(ヴォールト)というドーム状の天井仕上げを導入しました。Vaultはゴシック様式の教会建築によく見られます。江戸から明治・大正の頃には日本の教会でも多く導入され、コウモリ天井と称されたりします。コウモリ傘のような仕上がりだからですね。

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 来月は、内装の仕上げ工事の後半をお伝えしようと思います。


デザイナー 小野清一郎 2018年2月1日


買付けツアーのその後 15

 先月から引き続き、内装仕上げの様子をお伝えします。
 診療室の消毒エリアのキャビネタリーが完成しました。

 私はもともとアメリカのキャビネタリーを利用したキッチンの設計が大好きで、全体のバランスやアライメント(配列)にはいつもミリ単位でこだわっています。今回のようなI型のシンプルな設計でも、窓とのアライメントをきっちり詰めて設計していくと、このように凛とした美しさを得ることができます。
 そして建築関係者の方々には御理解いただけると思うのですが、キッチンの両サイドにフィラーという帳尻合わせの部材を一切使っていません。当然かなり精度の高い施工が要求されますが、この課題をクリアすれば、このように完璧なアライメントを作り上げることができます。
 そして、歯科用の診療台が設置されました。

 その他多くの機材や資材が設置され、診療室は完成しました。

 こちらは診療室から玄関側を臨んだ風景です。

 待合室の壁紙は、私の推奨するコンビネーションを採択していただきました。

 弊社をはじめ関係者から、待合室のテレビモニターを新築及び御開業のお祝いとして贈呈させていただきました。

 2階の建具も取付が済みました。こちらは収納扉です。

 そしてこちらがミニキッチンの入った水場です。

 こちらは2階のトイレからカンファレンスルームを眺めた様子です。

 最後にスタッフルームの扉を閉めた状態を紹介します。アメリカの扉は、安くても意匠が素晴らしいですね。ドアノブも3,000円程度のものですが、凝ったデザインをしています。私が北米の建材にこだわる理由がここにあります。

 来月は、いよいよ外構工事に取り掛かります。


デザイナー 小野清一郎 2018年3月1日


買付けツアーのその後 16

工事も最終局面に入ってきました。今月は外構工事から竣工の様子をお伝えします。
まずは玄関ポーチ部分の枠組みをブロックで構成します。スロープも形づくっていきます。

枠組みが出来上がり、コンクリートを打設します。

コンクリートの硬化後、コラム(ポーチの柱)を固定します。

次に駐車場の輪止めを設置します。

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隣地との境界にブロックを敷設して見切ります。

商業施設(医療機関)ですので、看板も大事です。今回は看板のデザインのお仕事も頂戴いたしました。
アメリカの歯科医院のような看板を作って欲しい、との御要望を頂戴しました。お任せください。そのテイストは弊社の最も得意とする領域です。(笑)
というわけでこのような看板をお作りしました。

そして、残りのエリアにはインターロッキングという舗装材を敷き詰めていきます。

敷き詰めが完了しました。

最後の仕上げとして、目地材となる砂を全体にまんべんなく撒きます。

出来上がりました。竣工です。

S先生、御開業、誠におめでとうございます!
すっかり周辺環境に溶け込んだ瀟洒な洋館の歯科医院ですね。地域医療にこれからは思う存分、腕をふるってくださいませ。この度は御用命を賜り、誠にありがとうございました。


デザイナー 小野清一郎 2018年4月1日


トリミングサロンLANA様 1

今月からは店舗の事例をお伝えしようと思います。お施主様はトリミングサロンLANA様です。現場は横浜市鶴見区のテナントです。現状が次の画像です。

今回の現場で非常に面白かったのは、設計に対するお施主様からの付帯条件として、こちらのアンティークの扉を使用して欲しい、との要望が寄せられたことでした。

とってもお洒落で、味わいのあるパネルドアです。真鍮のハンドルがアンティークとしての重厚感を醸し出していて、デザイナーとしてはビビッときました。コンセプトは50年代のアメリカのダイナーでしょうか。来月は工事の様子をお伝えします。


デザイナー 小野清一郎 2018年5月1日


トリミングサロンLANA様 2

先月から引き続き横浜市鶴見区にあるトリミングサロンLANA様の新装工事の報告です。工事が着工しました。
まずはお決まりの解体工事です。水回りは土間のコンクリートも撤去しました。配管からやり直す必要があったからです。

整地をして配管を組み直してからコンクリートを打設しました。

その後にプラットフォームとなる床を張り巡らせます。

外部は軒下となるポーチを設け、奥まった位置に玄関扉を備えた外壁を設置しました。

天井はジプトンという、下地材と仕上げ材が一緒になった材料を貼ります。事務所や店舗等ではお馴染みの材料です。

下地が整いましたので、来月は仕上げ工事の様子を紹介します。


デザイナー 小野清一郎 2018年6月1日


トリミングサロンLANA様 3

横浜市鶴見区にあるトリミングサロンLANA様の新装工事の続きです。
店舗正面の外壁はサックスブルーのサイディングを採用しました。独特な中間色で、日本ではあまり使われませんが、アメリカではよく使われています。

 

サイディングを貼り上げたらケーシングを取り付けていきます。

 

外壁が出来上がりました。。

来月は内装の仕上げをお伝えします。


デザイナー 小野清一郎 2018年7月1日