デザインについて

外壁材・屋根材の影響(実例編)

 以前、「屋根材について」「外壁材について」という回で、これらの建材がストリートスケープへ与える影響について説明させていただきましたが、本日は実際にこのコンセプトに則って施工した例を紹介したいと思います。

 今回紹介させていただくお宅は、更地からの新築物件のケースでした。当初隣り合わせの二区画の更地が販売され、右側の土地を購入されたお施主様から弊社に設計の御依頼がありましたが、左隣のお施主様は他社様へ設計と施工依頼をされました。したがって、このままですと全くバラバラな建築物が隣同士に建ってしまい、ストリートスケープに統一感や一体感を与えることは到底不可能なことが予測されました。

 次の画像は、弊社のお施主様の方のお宅です。外壁材にはラップサイディングを採用いたしました。また、画像には写っていませんが、屋根には黒色のアスファルトシングル葺きを採用いたしました。

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 そこで、わたしからこの二区画を販売された不動産屋様を介して、左側の土地を購入された方へ、弊社の採用した屋根材と外壁材と同一の商品を採用していただくことをお願いさせていただきました。交渉に当たってくれた不動産屋様のおかげで、無事お隣様も同一の建材を採用していただくことが決まりました。

 よそ様のお建てになる家の仕様や建材をこちらが勝手に決めてしまうのですから、本来は誠に失礼千万な話なのです。しかし、私にはストリートスケープへの影響の大きさが当然の如く予想できておりましたので、中に入っていただいた不動産屋様にはその点を上手に説得していただきました。最終的に採用が決まった時には本当に胸を撫で下ろしました。こうすることで、この二軒のお宅は相互に資産価値を高め合うことが期待できるわけです。

 次の画像は実際に双方のお宅が竣工した直後の画像です。デザインが全く異なる二軒でも外壁材と屋根材が統一されると、連続性と一体性が図れます。

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 こちらは別の角度から撮ったものですが、たった二軒でもこの一角にはちょっとした独自の世界が展開されています。

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 二軒のお宅がほぼ同時に完成する頃、面白いことが起きました。なんと左側のお施主様から外構の建材も統一しましょう、とのお申し出があったのです。弊社のお施主様も当然御快諾いただいたので、結果的に外構工事の完了後には次の画像ような風景が創造されました。

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 ちょっとしたアメリカ映画にも出てきそうな風景が、たった二軒で創り出されました。本当におめでとうございます。御両家様にはこの場をお借りして、心より御竣工のお祝いを申し上げます。
 


デザイナー 小野清一郎 2016年2月1日


鎌倉の又吉歯科医院様 1

今月から新しい施工例の紹介をさせていただきます。現場は、鎌倉市にある又吉歯科医院様です。

お父様の代に2×4で建築された戸建ての診療所ですが、息子様の代になり増築したいとの御希望でした。

こちらが原状のファサードです。方位は西を向いています。

こちらはファサードを南西方向から写した様子です。

診療室の入口は通常の戸建てに使用する玄関扉を利用しています。お施主様からの要望では、診療所らしい自動ドアに改修したいとのことでした。

そして従業員が出入りする勝手口が、患者様用の扉の左横に配置されています。要望として、この勝手口を建物の北側へ移設したいとのことでした。

こちらがファサードの左側面、すなわち北側の様子です。従業員用の勝手口をこちらへ移設する予定です。

実は今回の増築工事は、オリジナルの建物自体を設計施工された業者様に既に契約されていました。ところが、出来上がってきた図面に違和を感じたお施主様が弊社に御相談にお見えになり、弊社からその設計の問題点をいくつか指摘させていただきました。

その結果、他社様との契約を解除され、弊社と新たに契約されたという複雑な経緯がある現場なのです。

来月から、他社様が提案された工事計画の問題点を掘り下げて解説していきたいと思います。


デザイナー 小野清一郎 2019年6月1日


平成から令和へ

今年は、元号が平成から令和へ移行しました。いろいろなことがあった一年ですが、私には改元と消費増税の関係が気になった年になりました。

消費税(3%)が我が国に最初に施行されたのは、1989年平成元年の4月でした。その前年の12月に消費税法が成立し、翌月に昭和天皇が崩御されたので、改元と同年に導入することを見据えた法整備だったのではないかと邪推したくなるような絶妙なタイミングでした。改元のお祭り気分が、増税の嫌気をある程度癒す効果があったことは間違いないと思います。国民は新しい時代に希望と期待を抱いていたのではないでしょうか。

政府はその8年後の1997年(平成9年)に、5%へ増税。さらにその15年後の2014年(平成26年)に、8%へ増税。この15年間には消費税をめぐり、増税しないことを公約した民主党への政権交代がありました。その後民主党は、参院選の直前に10%へ増税することへシフトしたことが原因で大敗し、再び自民党への政権交代が起こりました。

そして2014年から5年後の今年、10%へと移行しました。導入からちょうど30年をかけて10%にたどり着いたことになりますが、国の試算では20%程度まで上げないと財政の健全化が図れない、といわれています。あと10%上げたい政府としては、現在の天皇陛下から秋篠宮へバトンタッチする時が最大のチャンスとして身構えているのかもしれません。そんなことを想起している令和元年の師走です。皆様も良い年をお迎えくださいませ。

 


デザイナー 小野清一郎 2019年12月1日


謹賀新年

新年、明けましておめでとうございます。令和2年、2020年の幕開けです。今年はなんといっても東京オリンピックの年であることが最大のニュースではないでしょうか。

建築デザイナーとして今回の東京オリンピックについて考えるとき、やはり新国立競技場のデザインに関する混迷に注目せずにはいられません。

最初のコンペを経て採用されたのは、、イギリス人デザイナーのザハ・ハディド氏の作品でした。

引用:www.jpnsport.go.jp

この作品の意匠は、極めて未来的でかつ有機的な曲線が特徴的なSF映画さながらの作品でした。ガウディの影響も感じられる興味深いものでしたが、やはり建築費が膨大すぎて現実的ではないことが判明しました。

その後、隈研吾氏の案が採用され、昨年、無事に竣工しました。

引用:https://www.sankei.com/photo/

こちらのデザインは、奇を衒ったこともなく、非常にシンプルで無難なものとなりました。ただ、この建築物にも興味深いスキャンダルが潜んでいました。それは、日本的なエッセンスをフィーチャーするために木材を多用したことが仇となり、オリンピックの象徴である聖火台が消防法上設置できないことが判明したのです。なんとも理解に苦しむ設計計画ですが、今後は聖火台がどこに設置されるのか、楽しみに待つしかありません。

さて、最初にデザインが採用されたザハ氏ですが、新しい国立競技場を見る機会を得ることもなく2016年にお亡くなりになりました。一旦は自分の案が採用されたにもかかわらず、その後却下され、結局採用された代案が聖火台を設置できない代物だったことについて、彼女は一体どんな印象を抱いていたのだろうか、私には興味がつきません。そんな別の視点からもオリンピックから目が離せない2020年になりそうです。みなさまにも幸多い年となることをお祈りしております。


デザイナー 小野清一郎 2020年1月1日


最近の建築業界

早いもので令和2年はもう1ヶ月が経過いたしました。昨年から今年にかけての建築業界について本日はお伝えしたいと思います。

昨年は未曾有の台風被害が関東を襲いましたが、現在もその復旧工事に業界全体が対応している状況です。これに東京オリンピックの準備のための工事関係も重なり、現在は人手不足が深刻な状況です。末端の職人レベルですと、今年の春まで台風の復旧工事の予定が入っているような状況で、新規の仕事には全く着手できないとのことです。

また私どもの得意とする輸入建築においても、米国と中国の貿易摩擦の影響、さらには現在、世界中に波及しつつある新型コロナウイルスの影響とで、建材の生産と流通がすっかり滞っている状況です。お施主様方には大変御迷惑をお掛けいたしますが、何卒、御容赦くださいますようお願い申し上げる次第です。

そんな先行き不透明な状況ではありますが、弊社としては昨年同様、粛々と業務を遂行して参る所存です。そして、昨年お手伝いした物件のお施主様から、大変喜ばしい御報告をいくつか拝受いたしましたので、来月からはその内容を御披露したいと思います。


デザイナー 小野清一郎 2020年2月1日


特殊なミッション 1

今月からは少し趣向を変えて、特殊なお仕事の報告をしたいと思います。

弊社はデザイン会社なので、工業デザインのようなお仕事もたまに依頼されますが、今回は自動車の内装に関する作業をすることになりました。

対象となる自動車は弊社の関係者が購入したホンダのオデッセイというミニバンです。作業のお話をする前にこの車両の特徴から説明しなければなりません。

オーナーはお仕事上移動することが多く、その間の移動中にも仕事ができる車両が必要になりました。業務ではどうしても大型のパソコンモニターが必要なので、リムジンのような空間が確保できる車両はないかと探してみたところ、オデッセイが適合することが判明しました。この車は通常の3列シートのミニバンなのですが、3列目のシートを床下に収納して2列目のシートをかなり後方まで移動することができ、それにより巨大な空間を作り出すことが可能だということが分かったのです。

車両は先月納車されました。来月からはこの内装作業についてリアルタイムでお伝えしていきます。


デザイナー 小野清一郎 2021年4月1日


特殊なミッション 2

今月もオデッセイという乗用車の内装関係の仕事について紹介させていただきます。まず、最初に行ったのが、後席からの視界を拡大することでした。この車両は弊社の社用車として利用することが多く、お施主様を後席にお乗せした際に広い視界を楽しんでいただきたい、という発想からでした。

通常の視界はこのような状況です。

まずは助手席のヘッドレストを撤去しましたが、このままですとステーが収まる穴が空いたままで、なんとも見苦しいですね。

そこで、このようなハンドルを製作し、装着しました。

穴が塞がり、すっきりしました。

さらにカー用品店でこのようなフックを購入しました。

そしてハンドルに装着してみました。

完成です。後席からの視界はこんなに広がりました。快適ですね。


今回の作業では、新造する装備品を純正品ぽく見せることに拘ってみましたが、いかがでしょうか。来月は、二つ目の作業を紹介します。


デザイナー 小野清一郎 2021年5月1日