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リノベーション実例報告シリーズ第1弾番外編
先月まで連載した築40年以上のマンションのリノベーション実例報告ですが、今月はオマケの記事として、その工事で使用したちょっと面白い家具を紹介いたします。
日本のソファベッドは、座面の長手方向をそのまま寝台に利用し、背面を後方へ倒すことで、幅を確保します。ですから背面を壁に密着させることができないことが多いですし、ベッドサイズもシングルサイズが主流です。
今回紹介するアメリカ製のソファベッドは、背面は稼動せず、そのまま宮(ヘッドボード)として利用するため、壁に密着させることができ、部屋を狭くしま せん。そして、座面が複雑なリンク構造により、手前にせり出してくるのです。ですから、ベッドサイズはクイーンサイズ(日本の規格のダブルサイズ)を実現 しています。大人3人が『川の字』になって就寝することができる見事なビッグサイズです。
ソファとしてのデザインも優雅で洗練されていて、ソファベッド特有の野暮ったさが微塵も感じられません。これがソファベッ ドであると知って、皆さん驚かれます。アメリカでは、こんな便利で美しい家具が、とても手頃な価格で購入できます。
弊社が家具の輸入から起業したのも、こ のような家具類に囲まれたアメリカ人の優雅な生活を、是非、日本の皆様にも紹介したかったからです。
デザイナー 小野清一郎 2014年3月1日
リノベーション実例報告シリーズ第2弾−その1−
先月までお伝えしたマンションのリノベーションの実例報告がことのほか好評を頂きました。読者の皆様、誠に有り難うございます。
そこで今月からは、別の物件のリノベーション例を報告したいと思います。こちらは賃貸マンションのリノベーション例です。マンションのオーナー様より、「入居率が下がってきたので、テコ入れしたい。」との御相談を頂戴し、弊社がお手伝いさせて頂きました。
早速ですが、原状を紹介させて頂きます。
竣工は平成元年です。築25年が経過しました。前回の昭和40年代のマンションに比べ若干新しいとはいえ、やはり四半世紀を経過するとずいぶんと隔世の感が有りますね。さあ、これをV.D.H.流にリノベーション(リフォーム)してみましょう。来月に続きます。
デザイナー 小野清一郎 2014年4月14日
リノベーション実例報告シリーズ第2弾−その2−
基本的に私たちは、お施主様の御希望に応じて、ドアノブ1個の交換等どんな些細な工事でもお受けいたしますが、トータルでコーディネートして欲しいという御要望においては、なるべくスケルトンに解体させていただいています。
そうすると既存の配管経路等、表面上不明な事実が可視化され、より精度の高い設計が可能になるからです。
来月はいよいよ竣工の画像を報告したいと思います。
輸入住宅のことなら、VDHにお任せください。
デザイナー 小野清一郎 2014年5月1日
リノベーション実例報告シリーズ第2弾 —その3−
いよいよ今月は竣工の画像をお届けします。解説は不要と思いますが、今回のコンセプトは『ボストニアン』というスタイルで、ボストン周辺の大学生をはじめとする若い世代の人達が、古くから遺るレンガ造のビルを現代風にリノベーションして利用しているムーブメントを再現してみました。
ちなみにこのお部屋、竣工後に若い新婚さん御夫婦がすぐに賃貸契約をされたとのことで、お施主様からも大変感謝されました。
他の空室も同様のコンセプトでリノベーションして欲しい、との御依頼を頂戴しました。デザイナーとしても、日本の若い世代にも受け入れられることができ、大変光栄に存じます。
デザイナー 小野清一郎 2014年6月1日
ファサードの方向性1
建築物の街への帰属性において、私はファサードに絶対的な法則・条件があるものとして設計しています。それは、このブログでも重々申し上げているとおり、「接道に対して正面を向きなさい。」ということです。
欧米は現在でもこの法則に則って家々や街全体が設計されています。かつての日本もそうだったのですが、残念ながら我が国の「近代建築」においてはそのルールはすっかり破壊されてしまいました。「自由」の名の下に「美」を構築する秩序が破壊されてしまっている現状には本当に憂いを感じます。
さて、今月もケーススタディを紹介したいと思います。
現場は古都・鎌倉の、とある閑静な高級住宅街です。昭和40年代に建てられた住宅を取り壊し、二世帯住宅を建築したいとの御要望です。原状の古屋の画像がこちらです。
撮影方向は西から東。つまり接道は土地の西側で、通りは南北に走っています。ところがそれだけではなく、この現場は北側にも接道している角地だったのです。少し退いた地点からの画像がこちらです。
画像だけではイメージしにくいかもしれませんので、俯瞰できるよう地図も紹介致します。
現地調査の結果、問題点を次のように抽出致しました。
① 古屋躯体は敷地内で南面し、玄関のあるファサードと思しき立面にはファサードとしての配慮が認められない。
② 太い通りで主たる接道である西側には周囲とは異質の外壁が設けられ、さらに裏口のような小さな階段までもが設置されている。
③ 角地であるにもかかわらず、北側の接道に対する配慮は一切見受けられない。
ファサードの絶対条件を満たしつつ、以上の問題点を解決していこうと思います。来月に続きます。
デザイナー 小野清一郎 2014年6月24日
ファサードの方向性2
前回、古屋の方向性について問題点をリスティングしました。これらの問題に対処するような設計をお施主様へプレゼンテーションさせていただいたところ、快く承認を得られましたので、早速工事に着工いたしました。解体後の画像がこちらです。
古都鎌倉の高級住宅街だけに、松をはじめとする植栽がとても日本的で落ちついた雰囲気を残しています。お施主様からも手前の松はそのまま残して欲しい、との御要望がありましたので、既存の植栽が醸し出すこの情緒を最大限に利用できるような設計を心掛けてみました。
前面道路交差点からの風景はこちらです。
上棟直後の画像です。交差点に向けてファサードを設定しました。これによって西側と北側のどちらの接道からも家の正面を眺めることが可能になりました。建立後はこの交差点のランドマークとして、存在感を主張することができるものと自負しています。
さて、建築方向が存在感を十二分にアピールできても、最終的な仕上によりそれが『クセ』や『アク』の強いものになってしまっては元も子もありません。古都鎌倉という立地と松を主体とする既存の植栽や近隣の家々と調和しつつ、日本的で落ち着いた『侘び・寂び』の情緒を醸し出しながら佇む、そんな作品になるように留意してみました。来月は躯体の完成を紹介する予定です。
デザイナー 小野清一郎 2014年8月1日
ファサードの方向性3
躯体が完成しました。御覧のとおり、今回のコンセプトは『明治建築』です。明治建築は、開国後の日本にて駐在する外国人らがこぞって建築した、いわば『輸入住宅』の先駆けです。200年近くの歴史を経ると、すっかり日本の風景の一つとして各地で受け入れられています。建築は地域に融和していなければならない、というポリシーのもと、このような意匠を導入させていただきました。腕を振るわせていただいたお施主様に深く感謝申し上げます。
足場を外して躯体のベールを脱がしたところ、御近所の御婦人から次のようなお褒めのお言葉を頂戴致しました。
「とてもお上品なお宅ですね。私が通っていた女学校を思い出し、懐かしくなりました。」
デザイナー 小野清一郎 2014年9月1日
進捗報告(深谷市S様邸)
当ブログの2013年5月号にてローカルスタンダードな建材を使用することを推奨致しました。その号にて、埼玉県深谷市では当地で伝統的なレンガを外壁に使用すると補助金を受給することができるお話をしました。弊社も深谷市の現場に御縁があり、デザインのお仕事を頂戴しました。今月は基礎工事の様子を紹介させていただきます。ブログへの収載を御快諾くださったS様御夫妻に感謝申し上げます。
画像1枚目は完成した基礎です。レンガを外壁に使用するといっても組積造ではなく、木造(この場合は2×6工法)の仕上げにレンガ又はブリックタイルを使用します。渋沢栄一の出生地でもある深谷市には明治維新の気概を感じられるような駅舎があります。その雰囲気をこのお宅からも感じられる、そんな意匠を目指しました。
次の画像は躯体の真ん中あたりをアップにしたものです。何やら変わった形の部屋です。「とにかく突き抜けたデザインで、誰もが驚くような建物を!」とのお施主様からの御要望にお応えするよう、哲学的にも幾何学的にも、そして歴史学的にも審美性と論理性が感じられるような設計を心掛けました。
来月は上棟の様子を紹介させていただきます。
デザイナー 小野清一郎 2014年10月1日
進捗報告(深谷市S様邸)2
今月は深谷市の物件の上棟の様子を紹介いたします。
画像1枚目はファサード側の様子です。ファサードは北向きで、この画像は北西から南東方向に向けて撮っています。明治の要素をふんだんに再現したデザインを採用していただきました。
二枚目の画像は南側のポーチの様子です。従前からお伝えしているとおり、建具は全て8フィート(2.4m)のものを使用しており、天井高は最も低い部分で3メートルとしています。
そしてこの物件の最大の目玉がリビングルーム兼ファミリールームです。その様子はいずれ紹介させていただこうと思います。
デザイナー 小野清一郎 2014年11月1日
進捗報告(深谷市S様邸)3
今月も深谷市の物件の報告をいたします。
北米から建材が届きました。画像1枚目は玄関扉です。まだ塗装前の状態ですが、材質が樹脂製で極めて断熱性能の高いものです。塗装すると木製扉そっくりな仕上がりになります。デザイン性は秀逸です。どうしてこのような本格的なデザインの扉が国産では製品化されないのでしょうか。
二枚目の画像は、前月も紹介した南側のポーチの様子です。前月の画像が示す柱に、北米製の化粧材を施します。この材料も樹脂製と窯業系材の複合で、腐らないのが最大の特徴です。似たような材料は国産でも販売していますが、どうしてもキャップとベースの寸法配分が悪くて意匠性が低いのです。国産建材には、性能や機能が優れていても肝心の意匠が劣るので採用できないという商品が多く、毎度残念な気がしています。
三枚目は外壁に使用する煉瓦調のタイルです。深谷市は煉瓦の街づくりに取り組んでいます。補助金を支給することで街並みの景観造成に積極的です。
最後は内装の窓周りの様子です。こちらも輸入建材のケーシング(額縁)とベースボード(巾木)を使用しています。このデコラティブな意匠には本当に参ります。一気に高級感が高まります。値段は驚くほど安いのです。アメリカの家が低廉な価格で供給されているのに絢爛豪華に見えるのは、こういった細かいパーツの集合によるのです。
デザイナー 小野清一郎 2014年12月1日
進捗報告(深谷市S様邸)4
新年明けましておめでとうございます。皆様にとって今年も幸多き年となりますようお祈り申し上げます。
さて、昨年から引き続き埼玉県深谷市の現場の進捗報告です。いよいよ竣工に近づいてきました。このお宅の大きな特徴は6mに及ぶ巨大吹抜け空間です。デザインのモチーフは、あの東京駅のドームです。八角形の特徴的な吹抜け空間を一般住宅にも採用してみました。辰野金吾への私のリスペクトを具現化してみました。一枚目の画像は天井の化粧梁の様子です。
二枚目の画像は、クロスで仕上げた状態を示します。化粧梁はこの後ステインで仕上げました。
三枚目は、吹抜けの様子です。東京駅のドームと同様、空中回廊が壁づたいにぐるりと廻ります。扉はいつもどおり2.4m高のものを使用しています。
デザイナー 小野清一郎 2015年1月1日
進捗報告(深谷市S様邸)5
深谷の現場が竣工いたしました。外壁は補助金申請ができるレンガ仕上げです。
二枚目の画像は、バックヤード側です。こちらはサイディングを使用することでコストに配慮しました。
ファサードとそれに連続するフロントヤードはパブリックな条件が付随するため、常にフォーマルな仕上げが要求されます。それに対しバックヤードは、とてもプライベートなスペースなので、カジュアルな雰囲気にすると巧くまとまり易いものです。
私たちが日頃から配慮しているフィロソフィーと行政の思惑が一致したケースでした。
デザイナー 小野清一郎 2015年2月1日