リノベーションについて

リノベーション実例報告シリーズ第1弾 その1

今月から数回にわたり、弊社が昭和のマンションを北米建材でリノベーションした実例の紹介をしたいと思います。
物件は、山梨県の山中湖畔のリゾートマンションで昭和46年に竣工されたもので、間取りは1LDKです。この40年以上前のマンションを、ハワイのコンドミニアムのコンセプトでリノベーションしてみたいと思います。

まずは原状の玄関を御覧いただきましょう。

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ごくごく普通の昭和40年代のマンションですが、床をタイルへ変更し、建具(収納扉)をシャッター(ガラリ)の収納扉へ変更し、手前の下駄箱を撤去します。居間への開口部には木製のダブルドアをインストールします。壁紙の色調もパステル系に変更してみましょう。

工事完了後の画像はこちらです。

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だいぶ印象が変わりました。マンションですので玄関扉は変更できません。したがって既存の玄関扉を開いた瞬間、まるで別世 界へ瞬間移動したような、そんな不思議な感覚を楽しむことができるようになりました。古い昭和の扉が、ドラえもんの『どこでもドア』のように、ハワイのホ テルやコンドミニアムを訪れたような気分へと誘ってくれます。

輸入住宅のことなら、VDHにお任せください。


デザイナー 小野清一郎 2013年10月1日


リノベーション実例報告シリーズ第1弾 その2

昭和46年に竣工した中古マンションを、北米建材でリノベーションした実例報告の第2回目です。
下の二枚の画像は、前回お見せした玄関ホールの方を居間から眺めた様子です。掃出しサッシのある画面左側が南ですので、居間の東側から西側を眺めていることになります。

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昭和の香りがプンプンしますね.右手奥にちらっと見える台所なんて、今ではなかなか見ることができないレトロな感じです。 そして掃出しサッシの上にあるボール型のブラケット照明は、これまた何ともいえないデザインです。同じような昭和40年代の別のリゾートマンションのリノ ベーションを手掛けたことが有りますが、やはり同様のボール型照明が玄関扉の上に設置されていました。まるで交番のようでしたが、当時の流行だったので しょうか? いずれにせよ、デザインとしても用途としても、まったく受け入れられない代物なので撤去させていただきました。

先月お伝えしたとおり、リノベーションのテーマは、『ハワイのコンドミニアム』です。建具だけでなく家具や照明器具も交換し、壁紙と役物の微妙な色調に配慮してデザインしました。 施工後の様子はこちらです。「居間」が「Living Room」に変身しました。

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デザイナー 小野清一郎 2013年11月1日


リノベーション実例報告シリーズ第1弾 その3

昭和46年に竣工した中古マンションを、北米建材でリノベーションした実例報告の第3回目です。

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前回お見せした居間の北側はこのように変化し、Living Roomへと変貌しました。建具を入れ替えるだけで、随分雰囲気が変わりますね。

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同じく東側です。ハワイアンキルトをあしらってみました。ハワイ感がグッと増しました。

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最後に掃出しのある南側です。ルーバーのバイフォールド(折戸)です。
アメリカではありふれた建材ですが、日本ではあまり目にすることが有りません。こんなアイテムもアメリカンな雰囲気を演出するのには大事です。


デザイナー 小野清一郎 2013年12月1日


リノベーション実例報告シリーズ第1弾 その4

皆様、新年明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
昨年の弊社は、「半沢直樹」から「ドクターX大門未知子」まで、ドラマの撮影協力に大忙しでした。果たして今年はどんな年になりましょうか。皆様にも御多幸な一年であることをお祈りしております。
さて、昨年秋より連載している、築40年以上のマンションをリノベーションした実例報告の第4回目です。今回は、和室をベッドルームへ改造したいと思います。
まず、原状を御確認ください。いたって普通の典型的な六畳の和室ですね。

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襖を開き戸へ、畳をフローリングへ、そして障子をルーバーの折れ戸へ変更します。これだけで随分印象が変わります。

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ここで、私のコーディネイトの小技を、上の画像で解説させていただきます。
リビングルームとベッドルームでは、全く異なる壁紙を使用しています。リビングルームは二種類の色違いで織目の壁紙、それに対しベッドルールは柄物の壁 紙にボーダーを配しました。一見して縁の無い壁紙同士ですが、同系色が混じり合う様に選択しています。こうすることで、二つの部屋には連続性が生まれま す。
ちなみに、実例報告1で紹介した玄関ホールの壁紙をリビングルームの一部にもボーダーとして使うことで、両者の間にも連続性が生まれているため、このユニット全体に連続性が保たれるように配慮しています。
それから、もう一つのポイントがファブリックです。コンフォーター(掛け布団)の柄とベッドルームのボーダーの柄とさらにリビングルームのソファの柄の三 つのモチーフをどれも薔薇にすることで、これらの連続性も演出しています。こうして、壁紙とファブリックの連続性をクロスオーバーさせることで部屋と家具 類などのアイテム群を密に一体化させることが可能です。

最後に、和室の内部に参りましょう。障子のアップがこちらです。ルーバーの折れ戸にしました。

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収納部の押入もクローゼットになりました。こちらもルーバーの折れ戸に変更して、通気性を確保しています。本物件は別荘として御利用なので、不在中も湿気がこもらないようにしました。

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いかがですか。かなりハワイのコンドミニアムに近づいた感じがしませんか。来月は、いよいよ最終章です。水回りの変貌を報告したいと思います。


デザイナー 小野清一郎 2014年1月1日


リノベーション実例報告シリーズ第1弾 その5

昨年秋より連載している、築40年以上のマンションをリノベーションした実例報告の最終回です。今回は、いよいよ水回り編です。

 

まずは国産のユニットバスを、VDH流にアレンジしてみましょう。原状は次の画像のとおりです。通常のホテルタイプのユニットバスですが、こうしてみるとユニットバスのデザインって、昔からあまり進化していませんね。

 

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こちらが工事後の画像です。それなりに可愛い雰囲気に作り替えることができました。この造作では、新品のユニットバスを入れ替えるよりも安価に仕上げることができました。

 

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そしてあの昭和レトロのキッチンを、改めてアップでよく見て頂きましょう。あの頃はこういう感じが普通でした。「三丁目の夕日」的な要素は何なのか、気づいた点を挙げてみると、

・フロアーキャビネットの低さ
・キャビネットの引手のデザイン
・レンジのダイヤルや引手のデザイン
・レンジフードのスイッチ形状とエンジ色のパネル
・水栓金具のデザイン
・紐スイッチが垂れ下がった蛍光灯
・蛍光灯下のオープン棚
・ステンレスのキッチンパネル

といったところが、古さを醸し出しているようです。さらにこの写真では、花柄の給湯ポットや炊飯器やオレンジ色の乾燥カゴなどがよりいっそうレトロ感を強調していますが、これらはキッチン自体の問題ではないので、無視して考えてください。

 

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さて、工事後はこんな感じです。

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御覧のとおり、キャビネットの扉やノブ、水栓金具のデザインは、とてもクラシックです。さて、40年後にこのキッチンはどのような印象になるでしょうか?想像してみてください。
恐らく、その頃最も時代遅れ感を醸し出すのは、レンジのパネル部分とレンジフードだと予測します。キャビネットや水栓金具はもともと古めかしいデザインな ので、よりアンティーク感をまとうようになると思います。しかし、レンジとレンジフードは現在のカタログ商品なので、40年後は、原状の昭和40年代のレ ンジらと同じ運命を辿ることになるでしょう。

私がいつもデザインに対して考えていること、それは、最先端でモダンなデザインは、そのときその一瞬が最先端なのであって、デザインの寿命は極めて短いの に対し、クラシックなデザインはいつまでもクラシックで、古くなる程アンティークやビンテージといった、昇華された価値を得ることができるということで す。


デザイナー 小野清一郎 2014年2月1日


リノベーション実例報告シリーズ第1弾番外編

先月まで連載した築40年以上のマンションのリノベーション実例報告ですが、今月はオマケの記事として、その工事で使用したちょっと面白い家具を紹介いたします。

日本のソファベッドは、座面の長手方向をそのまま寝台に利用し、背面を後方へ倒すことで、幅を確保します。ですから背面を壁に密着させることができないことが多いですし、ベッドサイズもシングルサイズが主流です。
今回紹介するアメリカ製のソファベッドは、背面は稼動せず、そのまま宮(ヘッドボード)として利用するため、壁に密着させることができ、部屋を狭くしま せん。そして、座面が複雑なリンク構造により、手前にせり出してくるのです。ですから、ベッドサイズはクイーンサイズ(日本の規格のダブルサイズ)を実現 しています。大人3人が『川の字』になって就寝することができる見事なビッグサイズです。

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ソファとしてのデザインも優雅で洗練されていて、ソファベッド特有の野暮ったさが微塵も感じられません。これがソファベッ ドであると知って、皆さん驚かれます。アメリカでは、こんな便利で美しい家具が、とても手頃な価格で購入できます。

弊社が家具の輸入から起業したのも、こ のような家具類に囲まれたアメリカ人の優雅な生活を、是非、日本の皆様にも紹介したかったからです。


デザイナー 小野清一郎 2014年3月1日


リノベーション実例報告シリーズ第2弾−その1−

先月までお伝えしたマンションのリノベーションの実例報告がことのほか好評を頂きました。読者の皆様、誠に有り難うございます。

そこで今月からは、別の物件のリノベーション例を報告したいと思います。こちらは賃貸マンションのリノベーション例です。マンションのオーナー様より、「入居率が下がってきたので、テコ入れしたい。」との御相談を頂戴し、弊社がお手伝いさせて頂きました。

早速ですが、原状を紹介させて頂きます。

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竣工は平成元年です。築25年が経過しました。前回の昭和40年代のマンションに比べ若干新しいとはいえ、やはり四半世紀を経過するとずいぶんと隔世の感が有りますね。さあ、これをV.D.H.流にリノベーション(リフォーム)してみましょう。来月に続きます。


デザイナー 小野清一郎 2014年4月14日


リノベーション実例報告シリーズ第2弾−その2−

基本的に私たちは、お施主様の御希望に応じて、ドアノブ1個の交換等どんな些細な工事でもお受けいたしますが、トータルでコーディネートして欲しいという御要望においては、なるべくスケルトンに解体させていただいています。

そうすると既存の配管経路等、表面上不明な事実が可視化され、より精度の高い設計が可能になるからです。

 

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来月はいよいよ竣工の画像を報告したいと思います。

輸入住宅のことなら、VDHにお任せください。


デザイナー 小野清一郎 2014年5月1日


リノベーション実例報告シリーズ第2弾 —その3−

いよいよ今月は竣工の画像をお届けします。解説は不要と思いますが、今回のコンセプトは『ボストニアン』というスタイルで、ボストン周辺の大学生をはじめとする若い世代の人達が、古くから遺るレンガ造のビルを現代風にリノベーションして利用しているムーブメントを再現してみました。

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ちなみにこのお部屋、竣工後に若い新婚さん御夫婦がすぐに賃貸契約をされたとのことで、お施主様からも大変感謝されました。

他の空室も同様のコンセプトでリノベーションして欲しい、との御依頼を頂戴しました。デザイナーとしても、日本の若い世代にも受け入れられることができ、大変光栄に存じます。


デザイナー 小野清一郎 2014年6月1日


ファサードの方向性1

建築物の街への帰属性において、私はファサードに絶対的な法則・条件があるものとして設計しています。それは、このブログでも重々申し上げているとおり、「接道に対して正面を向きなさい。」ということです。

欧米は現在でもこの法則に則って家々や街全体が設計されています。かつての日本もそうだったのですが、残念ながら我が国の「近代建築」においてはそのルールはすっかり破壊されてしまいました。「自由」の名の下に「美」を構築する秩序が破壊されてしまっている現状には本当に憂いを感じます。

さて、今月もケーススタディを紹介したいと思います。
現場は古都・鎌倉の、とある閑静な高級住宅街です。昭和40年代に建てられた住宅を取り壊し、二世帯住宅を建築したいとの御要望です。原状の古屋の画像がこちらです。

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撮影方向は西から東。つまり接道は土地の西側で、通りは南北に走っています。ところがそれだけではなく、この現場は北側にも接道している角地だったのです。少し退いた地点からの画像がこちらです。

古屋

画像だけではイメージしにくいかもしれませんので、俯瞰できるよう地図も紹介致します。

地図

現地調査の結果、問題点を次のように抽出致しました。

① 古屋躯体は敷地内で南面し、玄関のあるファサードと思しき立面にはファサードとしての配慮が認められない。
② 太い通りで主たる接道である西側には周囲とは異質の外壁が設けられ、さらに裏口のような小さな階段までもが設置されている。
③ 角地であるにもかかわらず、北側の接道に対する配慮は一切見受けられない。

ファサードの絶対条件を満たしつつ、以上の問題点を解決していこうと思います。来月に続きます。


デザイナー 小野清一郎 2014年6月24日


ファサードの方向性2

前回、古屋の方向性について問題点をリスティングしました。これらの問題に対処するような設計をお施主様へプレゼンテーションさせていただいたところ、快く承認を得られましたので、早速工事に着工いたしました。解体後の画像がこちらです。

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古都鎌倉の高級住宅街だけに、松をはじめとする植栽がとても日本的で落ちついた雰囲気を残しています。お施主様からも手前の松はそのまま残して欲しい、との御要望がありましたので、既存の植栽が醸し出すこの情緒を最大限に利用できるような設計を心掛けてみました。
 前面道路交差点からの風景はこちらです。

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上棟直後の画像です。交差点に向けてファサードを設定しました。これによって西側と北側のどちらの接道からも家の正面を眺めることが可能になりました。建立後はこの交差点のランドマークとして、存在感を主張することができるものと自負しています。
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さて、建築方向が存在感を十二分にアピールできても、最終的な仕上によりそれが『クセ』や『アク』の強いものになってしまっては元も子もありません。古都鎌倉という立地と松を主体とする既存の植栽や近隣の家々と調和しつつ、日本的で落ち着いた『侘び・寂び』の情緒を醸し出しながら佇む、そんな作品になるように留意してみました。来月は躯体の完成を紹介する予定です。


デザイナー 小野清一郎 2014年8月1日


ファサードの方向性3

躯体が完成しました。御覧のとおり、今回のコンセプトは『明治建築』です。明治建築は、開国後の日本にて駐在する外国人らがこぞって建築した、いわば『輸入住宅』の先駆けです。200年近くの歴史を経ると、すっかり日本の風景の一つとして各地で受け入れられています。建築は地域に融和していなければならない、というポリシーのもと、このような意匠を導入させていただきました。腕を振るわせていただいたお施主様に深く感謝申し上げます。
足場を外して躯体のベールを脱がしたところ、御近所の御婦人から次のようなお褒めのお言葉を頂戴致しました。

「とてもお上品なお宅ですね。私が通っていた女学校を思い出し、懐かしくなりました。」

ファサードの方向性3


デザイナー 小野清一郎 2014年9月1日