リノベーションについて

進捗報告(深谷市S様邸)

当ブログの2013年5月号にてローカルスタンダードな建材を使用することを推奨致しました。その号にて、埼玉県深谷市では当地で伝統的なレンガを外壁に使用すると補助金を受給することができるお話をしました。弊社も深谷市の現場に御縁があり、デザインのお仕事を頂戴しました。今月は基礎工事の様子を紹介させていただきます。ブログへの収載を御快諾くださったS様御夫妻に感謝申し上げます。

画像1枚目は完成した基礎です。レンガを外壁に使用するといっても組積造ではなく、木造(この場合は2×6工法)の仕上げにレンガ又はブリックタイルを使用します。渋沢栄一の出生地でもある深谷市には明治維新の気概を感じられるような駅舎があります。その雰囲気をこのお宅からも感じられる、そんな意匠を目指しました。

 

深谷市S様邸基礎1

 

次の画像は躯体の真ん中あたりをアップにしたものです。何やら変わった形の部屋です。「とにかく突き抜けたデザインで、誰もが驚くような建物を!」とのお施主様からの御要望にお応えするよう、哲学的にも幾何学的にも、そして歴史学的にも審美性と論理性が感じられるような設計を心掛けました。

 

深谷市S様邸基礎2

来月は上棟の様子を紹介させていただきます。


デザイナー 小野清一郎 2014年10月1日


進捗報告(深谷市S様邸)2

今月は深谷市の物件の上棟の様子を紹介いたします。
 
画像1枚目はファサード側の様子です。ファサードは北向きで、この画像は北西から南東方向に向けて撮っています。明治の要素をふんだんに再現したデザインを採用していただきました。

 

深谷市S様邸上棟

 

二枚目の画像は南側のポーチの様子です。従前からお伝えしているとおり、建具は全て8フィート(2.4m)のものを使用しており、天井高は最も低い部分で3メートルとしています。
そしてこの物件の最大の目玉がリビングルーム兼ファミリールームです。その様子はいずれ紹介させていただこうと思います。

 
深谷市S様邸上棟


デザイナー 小野清一郎 2014年11月1日


進捗報告(深谷市S様邸)3

今月も深谷市の物件の報告をいたします。
 
北米から建材が届きました。画像1枚目は玄関扉です。まだ塗装前の状態ですが、材質が樹脂製で極めて断熱性能の高いものです。塗装すると木製扉そっくりな仕上がりになります。デザイン性は秀逸です。どうしてこのような本格的なデザインの扉が国産では製品化されないのでしょうか。

 

深谷市S様邸建材玄関扉

 

二枚目の画像は、前月も紹介した南側のポーチの様子です。前月の画像が示す柱に、北米製の化粧材を施します。この材料も樹脂製と窯業系材の複合で、腐らないのが最大の特徴です。似たような材料は国産でも販売していますが、どうしてもキャップとベースの寸法配分が悪くて意匠性が低いのです。国産建材には、性能や機能が優れていても肝心の意匠が劣るので採用できないという商品が多く、毎度残念な気がしています。

 
深谷市S様邸建材裏庭ポーチ
 

三枚目は外壁に使用する煉瓦調のタイルです。深谷市は煉瓦の街づくりに取り組んでいます。補助金を支給することで街並みの景観造成に積極的です。

 

深谷市S様邸建材外壁ブリック

 

最後は内装の窓周りの様子です。こちらも輸入建材のケーシング(額縁)とベースボード(巾木)を使用しています。このデコラティブな意匠には本当に参ります。一気に高級感が高まります。値段は驚くほど安いのです。アメリカの家が低廉な価格で供給されているのに絢爛豪華に見えるのは、こういった細かいパーツの集合によるのです。

 

深谷市S様邸建材ケーシング

 


デザイナー 小野清一郎 2014年12月1日


進捗報告(深谷市S様邸)4

新年明けましておめでとうございます。皆様にとって今年も幸多き年となりますようお祈り申し上げます。

さて、昨年から引き続き埼玉県深谷市の現場の進捗報告です。いよいよ竣工に近づいてきました。このお宅の大きな特徴は6mに及ぶ巨大吹抜け空間です。デザインのモチーフは、あの東京駅のドームです。八角形の特徴的な吹抜け空間を一般住宅にも採用してみました。辰野金吾への私のリスペクトを具現化してみました。一枚目の画像は天井の化粧梁の様子です。

吹き抜け1

 

二枚目の画像は、クロスで仕上げた状態を示します。化粧梁はこの後ステインで仕上げました。

吹き抜け2

 
三枚目は、吹抜けの様子です。東京駅のドームと同様、空中回廊が壁づたいにぐるりと廻ります。扉はいつもどおり2.4m高のものを使用しています。

吹き抜け3

 


デザイナー 小野清一郎 2015年1月1日


進捗報告(深谷市S様邸)5

深谷の現場が竣工いたしました。外壁は補助金申請ができるレンガ仕上げです。

竣工

 

二枚目の画像は、バックヤード側です。こちらはサイディングを使用することでコストに配慮しました。
 
竣工

 
ファサードとそれに連続するフロントヤードはパブリックな条件が付随するため、常にフォーマルな仕上げが要求されます。それに対しバックヤードは、とてもプライベートなスペースなので、カジュアルな雰囲気にすると巧くまとまり易いものです。
 

私たちが日頃から配慮しているフィロソフィーと行政の思惑が一致したケースでした。

 


デザイナー 小野清一郎 2015年2月1日


住宅地(ストリートスケープ)の連続性と一体感・統一感

 以前、このブログにてストリートスケープの統一感のツボは屋根材に在り(2013年7月号)、とお伝えしましたが、もう一つ大事なポイントがあります。それは外構です。外構の設計デザインを近隣街区で共通化・共有化することが美しい街並みへの必須条件であると私は考えているのですが、この日本ではどこのお宅も独自の外構デザインを導入してしまうため、どうしても通りがゴミゴミした感じになってしまいます。
 画像1枚目は、母屋のファサードの方向性にこだわった例として以前紹介した物件の原状(工事前の様子)です。この住宅街の開発当初は、全ての区画が大谷石の石垣で統一されていたことが周囲の様子(画面右手奥)から窺い知れました。しかし残念ながら、いずれかの時点で画像のような塗り壁に改築されてしまったようでした。

 

外構1

 

 二枚目の画像は、外構工事が竣工した様子です。ご覧のとおり、既存の塗り壁を撤去して、この住宅地が開発された当時の状態へ復元するという設計をいたしました。

 

外構2

 

 次の画像は、復元した部分です。手前左側のお宅(お向かいさん)の大谷石の石垣と連続性と一体感・統一感が得られたことがわかります。美しい街並みを創り出すには、こういった周囲環境への配慮と建材の吟味が重要です。

 

外構3

 

 もう一枚、別の角度から復元した部分を示します。この角度からも、画面向こうのお向かいさんのお宅との連続性と一体感・統一感が得られたことがよくわかります。

 

外構4

 

 最後は車庫等の石垣を切り通した部分の処理の仕方を示します。切り通した場合も大谷石で巻き込んでいければそれに越したことはないのですが、現場の状況によっては他の建材を使用せざるを得ない場合もあります。このような場合は、慎重に建材を選択する必要があります。
 今回の現場は明治建築を目指しましたので、ご覧のようなレンガ積みで仕上げました。レンガは時が経つにつれ深い味わいを醸し出してくれる建材です。現場の大谷石の既に枯れた感じと調和していくことが期待できます。

 

外構5


デザイナー 小野清一郎 2015年3月1日


ストック利用の勧め 5

 先月の続きで造作工事の後半部分です。梁を露出させて下地を組んでいく様子を紹介いたします。一枚目の画像は先月お伝えした2階の部分です。

造作中

 同じく2階の別の部屋です。窓周りにはケーシングを装着しています。

造作中

 1階の天井にも梁を露出させています。

造作中

造作中

 来月はいよいよ完成した内部を紹介したいと思います。


デザイナー 小野清一郎 2015年8月1日


ストック利用の勧め 6

 いよいよ内部完成の様子をお伝えいたします。まずは玄関ホールです。

内装

 あの階段ホールの手摺もこんなに綺麗になりました。

内装

 さらにこの家のお宝だった丸太梁はこのようになりました。

内装

内装

内装

内装

 2階だけでなく1階も梁を露出させて、天井高をめいいっぱい上げました。

内装

内装

内装

 こちらはキッチンの様子です。設備が変わると変化が大きいですね。

内装

 最後に、1階のバスルームの様子です。

内装

 来月は足場が外れた外部の様子を紹介したいと思います。


デザイナー 小野清一郎 2015年9月1日


ストック利用の勧め 7

 今月は外部の竣工をお披露目いたします。まずは工事前の状態をおさらいしてみましょう。

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 外構工事と一部の仕上げがまだ終わっていませんが、このようなアピアランスに変貌しました。

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 基本設計は良好だったのですが、私がどうしても容認できなかった部分が二箇所ありました。まずは窓寸法のバランス不良を起こしていたドーマー。

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 それから、やはり玄関の入母屋とのバランスを崩してたコラム。

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 これらの要素は、それぞれこのように改善いたしました。

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 そして外構工事も終わった画像がこちらです。といってもドライブウェイのみ舗装しただけですが。これからフロントヤードは、オーナー様のセンスで素晴らしい展開を見せてくれるものと期待しています。

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 いかがでしたか?デザインや設計が優良なストックであれば、壊さずにリノベーションやリモデリングすることで、新築と同様の気持ち良い空間を創造することが十分に可能です。
不動産を購入する際は、中古物件だからと見過ごさず、丹念に市場を調査することをお勧めいたします。思いの外に美しい住宅が、驚くほどの低価格で眠っているかもしれません。


デザイナー 小野清一郎 2015年10月1日


深谷市のS様邸訪問記 1

 以前紹介させていただいた深谷市のS様御夫妻より、「やっと落ち着きましたので、是非、遊びに来てください。」と御招待を頂戴いたしました。
 デザイナーとしては、竣工後にお施主様の御家族がどのような暮らしぶりをされているのか、非常に興味があるところです。特にS様邸のリビングには東京駅のドームからインスパイアされた吹き抜け空間をあしらいましたので、それがどのように生活に活かされているのか、とても関心がありました。

 早速、S様邸の様子を拝見いたしましょう。玄関扉を開けるとリビングを通じてバックヤードまで一望できます。アメリカではごくごく当たり前の設計なのですが、日本ではなかなか受け入れていただけません。(笑)
 幸いなことにS様御夫妻はカリフォルニアのロサンゼルスに長らく駐在されていただけでなく、現在も大手外資系企業で御活躍されていらっしゃるVIPですので、私のデザインの趣旨を即座に御理解してくださいました。
 そしてもう一つ幸いだったのが立地条件でした。バックヤードのさらに向こうには田園が広がっているので、玄関からも風景の素晴らしい拡大感が満喫できます。とても気持ちの良い眺望です。

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 そして玄関ホールを抜けると6メートルの吹き抜けたリビングに至ります。このリビングには2階部分に回廊をあしらいました。ホテルの雰囲気が感じられます。開口部のアライメントについては、ミリ単位まで妥協しない私の意向を、お施主様も施工業者様も十分に御理解してくださいましたので、このように美しく仕上げることができました。

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 そして、天井を見上げると巨大なメダリオンが飾られています。S様のイニシャルである「S」と家紋をモチーフに、著名なグラフィックデザイナーにデザインを依頼したメダリンです。古くは「ネオ・ジャパネスク」、最近では「モダン・ジャパニズム」と称させますが、明治建築を現代化した躯体のデザインと非常によくマッチしています。

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 メダリオンのアップです。

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 2階の回廊へ昇る階段がこちら。正八角形に順応させ、階段下はファイヤープレイス(暖炉)としました。

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 暖炉の上は収納とし、御主人のオーディオ装置を格納しました。

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 そして暖炉にはペレットストーブを導入しました。

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 来月は、先程の階段を上って2階の様子を拝見いたしましょう。


デザイナー 小野清一郎 2015年11月1日


深谷市のS様邸訪問記 2

 先月紹介した深谷市のS様邸の内覧ですが、今月はホールの2階部分を御覧いただきます。
 空中回廊から眺めた感じはこちらです。各部屋への扉のアライメントをきっちり確保していますので、ホテルのような風景を実現しました。

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 吹き抜けの天井はこのような意匠です。

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 各お部屋の様子です。こちらは御主人様のトレーニングジム。

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 こちらは書斎。

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 そしてこちらは客間です。来客の方々は、きっとホテルに宿泊しているような気分になれるのではないでしょうか。

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 そしてこちらは「おまけ」の画像です。1階キッチンのアイランド上に、天吊りのラックをあつらえました。窓からの光がワイングラスや色とりどりのガラス瓶と戯れて、キラキラしています。ジャズを聴きながらお食事を御馳走になりましたが、ここが深谷市とは思えない、ゆったりした優雅なひとときを満喫することができました。S様御夫妻には心より感謝申し上げます。ありがとうございました。

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デザイナー 小野清一郎 2015年12月1日


横浜市歯科医師会様の受付工事 1

 横浜市歯科医師会様から、「診療室の受付カウンター周囲を改善して欲しい。」との御要望を頂戴しました。個人のお施主様とは異なり、法人様や企業様の場合は、役員会や理事会にてプレゼンテーションを行った上で採用が諮られます。ちょっとした工事でしたが、しっかりコンセプトをお示しする必要がありました。面白いケースでしたので、紹介したいと思います。

 現場は、横浜市歯科医師会様が運営する「休日急患及び障害者歯科診療所」という病院の待合室と診療室を区切る会計カウンター周囲でした。
 原状が次の画像です。

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 お施主様のお悩みを順番に挙げてみたいと思います。まずは、

① パーテーションを構成する太い上部框が、ちょうど受付担当者や患者の顔面の高さにあり、非常に目障りである。
② 右手の掲示板(コルクボード)は内側に立て掛けるしかなく、不安定で、掲示物の視認性も劣る。

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 次に、パーテーションの中央部には夜間の防犯用のため、可動式のパネルが組み込まれていました。上の画像は、その可動パネルを閉じた状態を示します。この可動パネルにも問題がはらんでいました。

③ 可動パネルには対話用の開口が未設定なので、閉じた状態では会話が不明瞭になってしまう。
④ 可動パネルの下部に会計用の開口が設けているだが、その開口が広すぎるため、知的障害児らがカウンター上に乗って潜り込もうとしてしまう。

 また、次の画像はレジ周囲の様子ですが、ここにも会計用と思しき開口が設けられていました。ここでの問題が次の内容になります。

⑤ 不必要な開口がパーテーション全体の意匠的なバランスを崩す要因となっているだけでなく、会計業務の内部を暴露することになっている。

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 そして最後の画像がカウンター左手のレジ周囲の様子になります。ここでの問題がこちらです。

⑥ 数種類の部材を使用することで色調の統一性に欠け、審美的に非常に劣るフレームワークとなっている。

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 以上の各項目が全体のデザインから指摘された問題点でした。来月は細部の問題点について紹介したいと思います。


デザイナー 小野清一郎 2016年3月1日