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買付けツアーのその後3
横浜市泉区の歯科医院新築物件ですが、先日、地鎮祭が行われました。祭壇の様子がこちらですが、既に地縄が張り終わり、建物の外形が表示されています。
通りからの様子がこちらです。いよいよ、という感じで、設計者の私も夢が膨らみました。
土地全面に神主様がお清めの塩を散布してくださり、無事、地鎮祭は終了しました。
来月は基礎工事の様子が伝えられると思います。
デザイナー 小野清一郎 2017年3月1日
買付けツアーのその後4
今月は基礎の打設前の様子を紹介いたします。
最近はフーティンのある布基礎をすっかり見なくなりました。今回もベタ基礎が採用されました。まずは捨てコンを流して、防湿シートを敷きます。
続いて立ち上がりの型枠を組みます。
現場には鉄筋もすでに納入されています。
鉄筋を組んだ後にいよいよ打設ということになります。来月は打設後の様子を紹介する予定です。
デザイナー 小野清一郎 2017年4月1日
買付けツアーのその後 5
今月は基礎を打設する様子を紹介いたします。先月、底盤の様子は紹介していますので、今月は立ち上がりの部分の打設をお示しします。
まずは型枠を組み立てた様子です。
その後、生コンを流し込んで打設します。英語ではこの工程をキャスト(cast)と表現されますが、流体状の原材料を型の中へ流し込む作業は一様にこう呼ばれます。金属加工の「鋳造」も「キャスト」と呼ばれますが、私が最初にこの言葉を知ったのは小学生の頃で、マジンガーZの玩具である「超合金シリーズ」がデビューした際に、「ダイキャスト製」という宣伝文句を耳にした時でした。ダイキャストとは、キャスト時に人為的に加圧をすることで、型の再現精度を高める手法のことだそうです。
そもそもキャストとは「投げ入れる」とか「放り込む」といった意味だそうで、マジンガーZを卒業した中学生の私が次にはまったのが「釣りキチ三平」でした。この漫画でもルアーフィッシングやフライフィッシングで疑似餌を漁場へ投げ込む動作を「キャスト」とか「キャスティング」と表現されていました。
その後、大学から社会人へと移行し、「鋳造のキャスト」や「コンクリート打設のキャスト」を仕事で常態的に扱うようにより、私の人生そのもののが「キャスト」界に放り込まれたような気がしている今日この頃です。
余談が長くなりましたが、こちらがキャスト後に型枠を撤去した様子です。
とうとう基礎が完成しました。
この上にこれから何十年という長い年月、お施主様とご家族、そしてスタッフの方々やここを利用される患者さんや地域の皆さんの生活の営みが展開されます。それを支える文字どおり「生活の基礎」であることに思いを馳せると、設計担当者としては毎度のことながら胸に込み上げてくるものがあります。
こちらが前面道路から眺めた様子です。
「どうかしっかり支えて欲しい。」と祈りを捧げて、現場を後にしました。来月から木工事の様子を紹介していきたいと思います。
デザイナー 小野清一郎 2017年5月1日
買付けツアーのその後 6
先月は基礎のお話をしましたので、今月は土台のお話です。
土台は、基礎と木造の構造体(建物本体)の間に介在する木材のことです。一般的には基礎のことを「土台」と呼称して比喩表現に利用されたりしますが、正しくは基礎に接する木材のことを指します。
基礎は、古くは石材でしたが現在は鉄筋コンクリート(RC)で構成されます。基礎は土中の水分と直接接しているため、木材より水に強い建材として石材やRCが採用されます。これらの建材は水に強いとはいっても若干の吸水性があり、絶えず水を含んでいる状態になります。そこに通常の木材を土台として緊結してしまうと、その木材はいずれ腐敗してしまいます。
そこで、土台に使う木材はヒノキ等の水に強い木材が採用され、さらに不朽性を高めるための薬剤がしっかり浸透加工された状態になっています。
では現場の様子を紹介いたしましょう。
まずは基礎の周囲から躯体を建造するための足場を設置します。
足場ができたら、いよいよ土台を設置します。その様子がこちらです。
先程、土台は湿った基礎と接するので耐水性の高い木材を使用するとお伝えしましたが、現在はさらに万全の湿気対策として基礎と土台の間に「基礎パッキン」と呼ばれるスリット状の樹脂材料を介在させます。
基礎パッキンが世に出るまでは基礎に床下の湿気対策用の通気口を設置していました。以前の家には次の画像のような小窓が基礎の周囲についていたのを御存知ですか。
さらに古い日本の古民家などでは「縁の下」と称し、石の基礎の上に床を浮くように貼り、床下は外部とツーツーの状態でした。床の高さをさらに上げたものが正倉院のような高床式建築ということになります。
日本の高温多湿な気候下にて、いかに地面からの湿気を逃し乾燥させるかが、家の耐久性には極めて重要です。そういった環境下での技術革新により、現在は基礎パッキン法が主流となりました。
とうとう土台の設置が完了しました。
来月からは躯体の工事に入ります。
デザイナー 小野清一郎 2017年6月1日
買付けツアーのその後7
今月からいよいよ躯体の工事を紹介する予定でした。ところが、工務店さんの都合により、着工が遅れてしまいました。そのため、昨年の夏にアメリカで買い付けた建材が、上棟する前に先に現場に届いてしまいました。
今回の連載のタイトルが「買い付けツアーのその後」ですが、その買い付けた建材を満載したコンテナがトラックに積載されて到着です。中の空気はオレゴン州ポートランドの空気です。
扉を開けて中の資材を運び出します。
このような長尺物は空輸では無理です。海運であれば、そのまま輸入できます。
大方、出し終えました。最後の荷物は最も重い玄関ドアです。作業員さん達、お疲れ様です。
本来であれば、上棟しているはずでしたので、建物内に収納できたのですが、御覧のとおり、躯体が見着工です。現場監督らが保管について打ち合わせています。結局、近傍の倉庫へ移動して保管し、必要な物ごとに個別に再搬入することになりました。
みなさん、大変お疲れ様でした。
来月からは、本当に躯体工事の紹介に入ります。とんだハプニングの今月でした。
デザイナー 小野清一郎 2017年7月1日
買付けツアーのその後8
今月からは正真正銘、躯体工事の紹介をさせていただきます。(笑)
ツーバイフォーのよう木造枠組壁工法は在来軸組工法とは異なる、とても特徴的な建て方をします。古くはバルーン工法と呼ばれ、次のような作業で建てました。
あらかじめ平地でハシゴ状の枠を作り、さらに壁となる板を貼り付けておきます。
そして、屋根側になる一端にロープを数本くくりつけ、大人数で一斉に綱引きして垂直に立ち上げるのです。こうすることで一気に2階までの外壁が立ち上がることになります。
この作業を四方同時に行えば、あっという間に建物が上棟するわけです。バルーン工法と呼ばれるのは、その様子があたかも巨大な風船を膨らませたように見えるからだと言われています。
このバルーン工法の実際の様子を現在も見ることができます。それはハリソン・フォード主演の映画、「刑事ジョンブック/目撃者」という映画の中の世界でのお話です。
映画の中ではアーミッシュの村に迷い込んだハリソン演じる刑事が、村人達と協働で家を建てるシーンがあります。みんなで一斉に綱引きし、壁を立ち上げていくシーンがリアルに描かれています。ぜひ、御興味ある読者の方は、レンタルビデオで鑑賞してみてください。
さてここで余談ですが、実はハリソン・フォード自身がツーバイフォーの大工であることを御存知ですか?
若かりし頃の彼は、ハリウッド関係者の自宅工事などを請け負う大工さんだったのですが、ある日、高名な映画会社の重役宅を工事している際に、そのお施主様からスカウトされ俳優へ転向したというキャリアがあります。
この映画ジョンブックでも、バルーン工法のシーンは自ら監修とテクニカルアドバイザーを勤めたそうです。
少し前に彼のドキュメンタリーを見る機会があったのですが、相変わらず御自宅のリノベーションは自分で日曜大工をしているそうです。番組では彼が仕上げた自宅のキッチンを紹介していましたが、それはそれは素晴らしい仕上がりでした。
二枚目で腕のいい大工さんなんて、本当にかっこいいですね。
話が長くなりました。ツーバイの話に戻りましょう。創世記にバルーン工法と呼ばれたものの、その後、設計の多様化や壁を作る平地の確保が都心部では困難である等の問題により、1階ごとに建てていく工法へと変化していきました。
まず1階の床を作り、その床の上で1階の壁を組み、立ち上げます。次に2階の床を作り、その床の上で2階の壁を組み、立ち上げるといった具合に、狭小地でも施工が可能な段階式にしたのです。
この工法は、各階の床上で工事が進められることから、プラットフォーム工法と呼ばれました。現在のツーバイフォーはすべてこのプラットフォーム工法ということになります。
では、今回の物件で見てみましょう。まずは土台の上に1階の床を張ります。これが1階のプラットフォームとなります。
プラットフォームが完成しました。基礎と同じ形状に完成しています。
1階の壁を作る作業は、このステージの上で展開されます。
来月は、完成したプラットフォームを活用したツーバイフォーの醍醐味をお伝えしたいと思います。
デザイナー 小野清一郎 2017年8月1日
買付けツアーのその後 9
先月はプラットフォームができるまでをお伝えしました。プラットフォームができれば、あとはその上でスタッド(柱)を組んで壁を作っていくわけですが、その方法も現場で組んでいく方法と、工場であらかじめ組んでおいてモジュール化し、現場でそれらを接合する方法の2つの工法があります。
今回は工期の短縮のために工場での製作を採用しました。したがって、現場ではあっという間に上棟してしまいます。私が現場に到着した時には、もうすっかり完成しておりました。
内部の様子はこちらです。まずは1階から。
そしてこちらが2階。
さらにこちらが小屋裏、つまり3階です。
ツーバイは壁構造なので、余計な梁等を使いません。屋根裏も空間として利用できます。屋根裏のことを英語ではアティック(Attick)といいます。アメリカの家は2階までで十分広いので、日本の様に小屋裏を居住スペースに利用する必要はなく、もっぱら収納や物置として利用しています。ビリー・ジョエルのアルバムに「SONGS IN THE ATTICK」という作品があります。「小屋裏の物置に仕舞い込んだ曲達」という意味で、往年の楽曲をライブで演奏したものです。物置なので電気も引いていないのでしょう。ジャケットでは、ビリー・ジョエルが懐中電灯で室内を照らしている様子が描かれています。
でも日本では、小屋裏はれっきとした3階の居住スペース、しかも子供部屋として活用することが多いので、「SONGS IN THE ATTICK」と言われると、「子供達が今夢中で聴いている流行歌」をイメージしてしまいます。アメリカ人と日本人では、Attick=小屋裏に対するイメージに大きな違いがありそうです。
デザイナー 小野清一郎 2017年9月1日
買付けツアーのその後 10
先月、あっという間に上棟しましたので、今月は外部の防水工事について紹介します。
まずは、ルーフィングといって、屋根の裏地となる防水シートを貼ります。
次に外壁の開口部を閉鎖していきます。窓を取り付けます。
そして玄関扉を取り付けます。
最後に外壁全体を「透湿防水シート」というシートで覆います。透湿防水シートは、室内の余分な湿気を通過させることができますが、外部からの水滴は通さない構造になっています。
最近は「通気工法」といって、外壁の下地材と仕上材を密着させず、通気層という空間を介在させる施工法が主流です。当物件でも通気工法が採用されました。この場合、透湿防水シートの上に「通気胴縁(つうきどうぶち)」というスペーサーを一定間隔で留めていきます。その上に仕上材を貼ることで、仕上材は通気胴縁の厚さ分だけ下地材から浮いた(離れた)状態で固定されます。
仕上材と下地材との間隙が通気層で、空気は自由に出入りできるようにしておきます。万が一、雨水が仕上材を通過しても、この通気層があることで乾燥され、外壁の下地を濡らさずに済むということがこの工法のメリットです。
来月は内部の工事の模様をお伝えします。
デザイナー 小野清一郎 2017年10月1日
買付けツアーのその後 11
今月は内装(下地)工事の様子です。壁と天井に石膏ボードをひたすら貼っていきます。外壁には断熱材を装填してから石膏ボードを貼っていきます。
2階の吹抜けに臨む部分はアーチで開放し、デッキとしました。
デッキの手すりです。手すりを支える小柱をバラスターといい、このような仕様をバラストレードと呼びます。
床の仕上げ材も貼り込んでいきますが、工事中汚れたり傷つけぬよう、その上に養生用のボードをさらに上貼りします。
下地ができましたので、来月は内装の造作作業を紹介します。
デザイナー 小野清一郎 2017年11月1日
買付けツアーのその後 12
今年のブログは今号が最後となります。一年経つのは本当に早いものです。皆様の2017年はいかがでしたか。
さて、内装の壁下地ができたので、いろいろな造作材を取り付けていきます。こちらは廻り縁という天井と壁の接合部分に貼っていく材料です。英語ではCrownといいます。部屋をぐるっと一周すると冠状になるからでしょう。
なお、床と壁の接合部に取り付ける部材を巾木といいますが、こちらは英語ではBaseboardと呼びます。
扉等の建具を設置した周囲には額縁を廻します。英語ではCasingといいます。外側をケースで覆うという意味です。
ミニキッチン周囲の壁にはキッチンパネルを貼り付けます。換気扇等の設備の下地も準備していきます。
廻り縁、額縁、巾木などのモールディング材と建具の取付が完了すると、次は塗装工程に入ります。
今回はペンキ仕上げがメインですが、2階のデッキの手すりだけはオイルステインで仕上げました。
また、床の仕上げはフローリングをメインに採用しましたが、1階の患者様用トイレは、タイル仕上げとしました。真ん中の円形の飾りタイルをメダリオンといいます。非常に高級感が出ますね。
来月は2018年最初のブログとなります。外部の作業を紹介したいと思います。
デザイナー 小野清一郎 2017年12月1日
買付けツアーのその後 13
新年、明けましておめでとうございます。今年も皆様にとって素敵な1年でありますようお祈りしております。
さて当ブログは、今年も例年どおり徒然なるままに皆様へ建築についての弊社のポリシーをお伝えしていこうと思います。どうぞお付き合いください。
本年最初の記事は、外壁工事の続きです。袖棟の部分はブリック仕上げとしました。乾式工法といってレールにブリックタイルを這わせていきます。
綺麗に這わせ終わりました。屋根は私の大好きな和瓦で仕上げます。こうすることで明治建築のような仕上がりになり、日本の風土にもよく調和できるのです。
ブリックとブリックの間にモルタルで目地を入れて貼り上がりです。
次に主棟の方ですが、こちらはラップサイディングで仕上げます。
綺麗に貼り終わりました。今回の物件ではブリックとラップサイディングの混合仕上げ及び和瓦仕上げとしてメリハリを演出しました。また、両隣のお宅の外壁色を利用することで3軒の連続性と一体性を保ちました。ブリックは左隣のお宅の外壁と同調し、ラップサイディングの色調は右隣の倉庫の外壁に近づけました。こうすることで左右の建築物の色調の差異を中和し、既存環境に違和感のないすっきりとしたストリートスケープを造成することができるのです。また、屋根の和瓦はこの地域一帯に調和させることを意図しています。
来月は内装の仕上げ工事に戻りたいと思います。
デザイナー 小野清一郎 2018年1月1日
買付けツアーのその後 14
今月は内装仕上げの様子をお伝えします。
幅木、廻り縁、額縁等の役物の塗装を済ませたら、壁紙を貼っていきます。
次の画像は、特徴的な2階の吹き抜け部分です。左側の壁の白い部分は、プロジェクター投影用のスクリーン仕様の壁紙です。患者さんへのコンサルテーションやスタッフさんらとのカンファレンスをする際に画像を投影できるように施工しました。
次の画像は、その吹き抜けから階下の玄関ホールを見下ろした様子です。
逆に玄関ホールから2階のカンファレンスルームを見上げた様子がこちらです。
1階の患者さん用トイレの床はタイルで仕上げました。メダリオンという装飾用の特殊タイルを導入しています。高級感がぐんと高まります。
待合室の天井はVault(ヴォールト)というドーム状の天井仕上げを導入しました。Vaultはゴシック様式の教会建築によく見られます。江戸から明治・大正の頃には日本の教会でも多く導入され、コウモリ天井と称されたりします。コウモリ傘のような仕上がりだからですね。
来月は、内装の仕上げ工事の後半をお伝えしようと思います。
デザイナー 小野清一郎 2018年2月1日