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アメリカの住宅街
イギリスの住宅地はリースホールド(借地権)が主流であるのに対し、日本は圧倒的にフリーホールド(所有権)が主流である ことは前回書きました。イギリスは借地制度により、家主が地主の意向に添わない建設や修繕を勝手に行うことを禁じ、地主(開発会社)が理想とする開発当初 の姿を長年にわたり住宅街全体に維持してきましたが、我が国の場合は折角計画的に開発した住宅街であっても、各区画の所有権を販売してしまったがために、 後々どんなに環境にそぐわないような建築が出現しようとも法律的に規制することができません。
実は世界屈指の美しい住宅街を誇るアメリカも、我が国と同じフリーホールドです。
ところがアメリカの住宅地は、わが国と同じようにフリーホールドが主流であるにもかかわらず、整然としてどの建築も違和感を抱かせない、実に気持ちの良 い景観を維持しています。その秘密は、開発会社が開発当初に定めた厳格な規約『CC&Rs(Covenants, Conditions and Restrictions)』と、それを忠実に遵守している『HOA(Home Owners Association)』の存在にあります。
このCC&RsとHOAは、日本のマンションや住宅街に存在する『管理規約』や『管理組合』とは、その精度や緻密度の高さから全く異質のレベルのもので す。たとえば、「屋根材の形状はこれこれで、色は基準色台帳の何番から何番までの範囲に限る。」といった建材の色や形は勿論のこと、建築そのもののデザイ ン・スタイルも「何世紀に英国で流行した何何様式でなければならない。また、屋根の勾配も何度でなければならい。」といったように非常に具体的で限定的で す。
またデザインだけでなく、「ドライウ゛ウェイ(車庫前の通路)に駐車できるのは2時間まで。」といったような生活の仕方に関する条文まで規定していると ころもあります。ちなみに、通りに面して洗濯物を干すことは、厳しい罰則が課される程の『一般良識』として周知されています。
こうして日本人には口うるさく感じるくらい仔細にわたる規約を作り、住民皆で遵守し続けてきたことで、開発当初の姿を永年維持しています。こうすることでイギリス同様、地域全体の景観と資産価値を高めてい
デザイナー 小野清一郎 2013年3月1日
資産価値を持続させるための秘訣
これまで資産価値を持続させる要素として、流行を追わない普遍的意匠の重要性を強調してきましたが、私なりには次の6つの原則を意識して設計しています。
1. トラディショナル・スタイル(クラシック・スタイル)の踏襲
2. フレキシブルな間取り
3. 3m以上の天井高
5. ファサードの絶対的な確保
6. ローカルスタンダードな建材の採用
これらのルールを遵守しなければ、美しい街並や景観を創造することはできない、と私は確信しています。毎度申し上げているとおり、美しい街並、美しい建築は、経年しても人々の高い評価を必ず得ることができるからですが、今回は5.ファサードの絶対的な確保についてお伝えしたいと思います。
ファサード(Facade)とは、建物の正面玄関を含む面のことで、英語のFace(顔)と語源を同じくするフランス語由来の言葉です。『建物の顔』と定義してもよいくらい建築デザインには重要な要素です。
このファサードは家のどの位置に来るべきでしょうか?
答えは接道面。つまり道路に面するような位置です。『顔』と呼ばれるくらいですから、通りすがる人々や車両の方に面してい なければならないのです。ところが、我が国ではそっぽを向いてしまっている家が非常に多いのです。人間でいえば、絶えず真横を向いて他人と会話しているよ うなもので、不自然極まりない状態です。
大きな寺社仏閣は長い参道の果てに本殿がどっしりと構え、荘厳な佇まいですが、この本殿が、90度回転していたらどうで しょうか? 非常に不自然で滑稽な状況なのが容易に理解できると思います。建築物は必ず然るべき建立方向が存在する、というのが私の信念です。寺社仏閣の 本殿のファサードが参道に対峙し、その内部にも参道の果てを見据えるように仏像らが安置されているのが、設計者の意図であり、宇宙感をも暗示する哲学的で 人間らしい自然な姿です。一般住宅でもそれは同じです。玄関、つまりファサードが接道面に存在しなければならないのは、鉄則中の鉄則だと私は確信していま す。次のA~Dの4枚の写真はとある街の風景です。4つの画像はそれぞれほんの数ブロックしか離れていませんが、それぞれに写っている家々の玄関の位置に 着目してください。AとCの家々はファサードをしっかり接道面に設定して建てていますが、BとDの家々はすべて接道面を無視して建てています。
どちらの街並が美しいと感じられるでしょうか? また言い換えるなら、どちらの街並が人々に好感を抱かれるでしょうか? そして家を買うならどちらの街並の家を買いたくなるでしょうか?
その答えが資産価値の高さの裏付けになります。
A | B |
C | D |
デザイナー 小野清一郎 2013年4月1日
ローカルスタンダードな建材の採用
前回、資産価値を持続させる要素として、次の六つの原則を挙げましたが、今回は6.のローカルスタンダードな建材について書こうと思います。
1. トラディショナル・スタイル(クラシック・スタイル)の踏襲
2. フレキシブルな間取り
3. 3m以上の天井高
5. ファサードの絶対的な確保
6. ローカルスタンダードな建材の採用
ローカルスタンダードな建材とは、建築現場周辺で昔から使用され、人々に慣れ親しまれている建材のことです。特にその地域特有の産出物を利用した建材は歴史的にも貴重で、その地域を象徴するべきマストアイテムであると考えています。
例えば、イギリスのコッツウォルド地方では、ライムストーンと呼ばれる石灰岩が産出されるため、古来より建築物の外壁に多 用されてきました。この石は『コッツウォルズストーン』とも呼ばれるくらい特徴的な黄色みをしています。したがって、この石で築かれた街並は、全体が黄色 みを帯びた景観を形成していて、『蜂蜜色の街』とも呼ばれています。もしあなたがこの街に更地を購入する機会を得たとしたら、どのような外壁材を選択しま すか? 日本で流行している左のようなモダンなサイディングを使用することは、到底考えられませんね。
〈コッツウォルドの街並〉 | 〈モダンサイディング〉 |
オランダのアムステルダムは、何世紀にもわたる煉瓦の風合いが、美しい街並を創造していることで有名です。面白いのは江戸 時代の日本と同様、運河に面した家々に対し間口の広さに応じて課税する『間口税』が存在したため、日本の長屋に似た鰻の寝床のような奥に細長い家々が連 なっている光景です。もし、この街の一角に長屋用の細長い土地を得たとしたら、あなたは安藤忠雄氏に『住吉の長屋』のようなコンクリート打ちっ放しの建築 物設計を依頼しますか? 勿論答えはNOにちがいありません。
〈アムステルダムの街並〉 | 〈住吉の長屋〉 |
舞台は海外の街だけではありません。島根県の津和野は『石洲瓦』の赤い甍波で有名です。島根県は石州瓦の導入に補助金を設 け、地元産業と歴史的景観を保護する取組みを行っています。津和野に家を建てるなら、補助金が無くても石州瓦を採用することがもっとも正しい選択であるこ とは明らかです。
〈石州瓦の甍波〉 | 〈津和野の散策道〉 |
埼玉県深谷市は、以前紹介した渋沢栄一の生誕地で、良質な煉瓦の産地としても有名です。現在、市を挙げて煉瓦建築の普及に 取り組んでいます。街の玄関であるJR深谷駅は見事な煉瓦建築で、渋沢が活躍した時代の浪漫すら彷彿とさせます。現在、弊社ではこの深谷市にてとある物件 を手掛けています。いずれ当HPにて紹介したいと思います。
〈JR深谷駅〉 | 〈深谷市のポスター〉 |
デザイナー 小野清一郎 2013年5月1日
外壁材について
先月に引き続き、周辺環境への配慮と調和について考えてみたいと思います。
外壁材は、それだけで建築物のスタイルを決定付けてしまう、非常に影響力のある部材です。それだけに周辺環境との調和には大きな影響を与えます。次の図Aは、いろいろな家屋の模式図を無作為に並べたものです。
外壁材の種類は左から、タイル、ラップサイディング、スタッコ、煉瓦、コンクリート打ち放し、とします。各家屋のデザイン もバラバラですが、それ以上に外壁材の選択に統一性や調和性は皆無です。また実際には、これに色調が加わりますので、現状は、良く言えば百花繚乱、悪く言 えば支離滅裂な状況です。悲しいですが、日本の住宅街の多くがこのような醜態です。
では、ここですこし工夫をしてみましょう。たとえば、真中の家の外装を補修を兼ねてリノベートするチャンスが訪れたとします。その際、外壁材を両隣家が使用しているものに揃えてみたとすると、次の図Bのようになります。
いかがでしょうか。真中の三軒は、外観デザインが全く異なるにもかかわらず、お互いの連続感が生まれ、ともてよく調和したのがお分かりいただけると思います。このストリートスケ?プでは、かえって左端と右端の二軒が浮いてしまった感じすら受けます。
さらに街ぐるみの取組みを行うとどうなるか検証してみましょう。たとえば、「建物のファサード外壁には、必ず赤煉瓦を使用 しなければならない。」といった建築規約が有ったとしたら、この通りでは下図Cのような状態になるでしょう。すると全ての家がそれぞれ好みの外壁材をメイ ンに使っていたとしても、共通する煉瓦の印象がそれぞれの家のデザインを貫き、街全体に連続感と一体感を生むのです。服飾でのコーディネイトと同じ要領 で、美しい街並を創造することができます。
デザイナー 小野清一郎 2013年6月1日
屋根材について
先月は外壁材がもたらすストリートスケープの統一感についてお話ししましたが、統一感という点では外壁より大きな影響力を持つ部材が有ります。それは屋根材です。
下図は、前月でも登場した、街の統一感を一切考慮していない家々の模式図です。
外壁材の種類は、左から暖色系タイル、緑色のラップサイディング、ベージュのスタッコ、赤煉瓦、コンクリート打ち放しと し、屋根材は、同じく左から灰色のカラーベスト、橙色の洋瓦、赤い板金屋根、黒い和瓦、陸屋根(平らな屋根のこと)で屋上防水のみとします。今回は着色し てみましたので、渾沌として支離滅裂な状況がさらに強調されました。毎度申し上げるとおり、悲しい現実ではありますが、日本の住宅街の多くがこのような状 態です。
そこで、この街では屋根材に関する建築規約を施行したとします。規約内容は、この土地で古くから使用されている黒い和瓦をどの家も使用しなければならない、というものです。街の景観は下図Bのように変貌します。
連続感が生まれました。外壁のテクスチャーや色調がバラバラでも、家の頭部である屋根材が統一されると、それだけでこのコ ミュニティーの一体化が実現します。そして右端の陸屋根の家だけがこの景観にそぐわない、異質なものであることが分かります。したがって、屋根の材料と色 調を規定するだけでなく、屋根には勾配をもたせて、規定する材料を必ず使用できるように規制しなければなりません。
有名な高級住宅街でも、「勾配屋根」を義務付けている所が有るには有りますが、屋根材までキッチリ規定しなければ、片手落ちで形骸化した絵の餅に過ぎま せん。コミュニティ全体の資産価値向上を目指すのであれば、屋根材の持つ影響力がこれほどまでに大きいということを、しっかり認識しなければなりません。
デザイナー 小野清一郎 2013年7月1日
琉球赤瓦
先月は屋根材のもつ影響力について触れましたが、異国情緒溢れる沖縄県でもそこに着目し、文化的で歴史的なアイデンティティの継承に県を挙げて力を注いでいます。
沖縄県を旅すると、近代的なデザインの新しい施設にも琉球赤瓦を導入することで、周囲への調和に配慮しつつ昔ながらの街並や景観を保全していることに目を見張ります。この努力が、いまだに沖縄県に異国情緒が漂い、独特な雰囲気を醸し出している源流になっています。
最初の画像は、沖縄本島を南北に走る高速道路内にある伊芸サービスエリアのメイン棟です。
日本中のどこにでも見られるような売店入口ですが、昔ながらの琉球赤瓦で葺き上げ、ファサードの真中にはシーサーもあし らっています。シーサーは琉球古来の魔除けの象徴ですので、正面入口の自動ドアの真上に配しているわけです。伝統的な因習に則った設計であることがわかり ます。自動ドアやアルミサッシのような新しい建具に彩られた現代建築に昔ながらの瓦を使用しても、ミスマッチの妙が感じられ、すんなり受け入れられること が分かります。
次の画像は、石垣島のフサキリゾートヴィレッジの様子ですが、トラディショナルな建材である赤瓦がこちらも見事に現代のリ ゾートコッテージに溶け込んでいます。全体的な設計がモダンなので、カジュアル感やリゾート感が感じられるのですが、そこにトラッドな瓦を使用することで 高級感や重厚感を加えることに成功しています。
最後は、宮古島の空の玄関である宮古空港です。
先程までの二例と比べ、さらに前衛的で思い切った造形ですが、そこに伝統的な赤瓦を使用しても何ら違和感が感じられないの が不思議です。それどころか。アバンギャルドなデザインは、下手をすると攻撃的な印象を生むことが有るのですが、伝統的な屋根材を導入することで、すっか り角が取れた柔和な印象さえ感じられる仕上がりになっています。
いかがですか、屋根材の選択が、全体の印象にとても重要なことが御理解いただけたでしょうか。そして以前お話ししたよう に、ローカルスタンダードな屋根材は、その地域の一体感や連帯感を生み、地域性、歴史性、民族性、文化性、諸々の要素を雄弁に語ってくれます。是非、お宅 の御近所の屋根屋根を観察してみてください。
デザイナー 小野清一郎 2013年8月1日
輸入住宅
弊社は、「輸入住宅」を取り扱っています。この「輸入住宅」という言葉ですが、恐らく皆さんがイメージしている意味とは少し異なるだろうということをお話ししたいと思います。
一般的には、次の二つの条件を満たした家屋が「輸入住宅」として定義されています。
- 輸入構造材を使用した『木造枠組壁構法(2×4、2×6等)』を採用している。
- 建具や床材等の仕上げ材にも輸入建材を使用している。
そもそも「輸入住宅」とは、旧建設省(現国土交通省)が日米の貿易不均衡を、少しでも是正するために推奨してきた政策課題 の一つで、当初は補助金事業の一つでした。したがって本来は、「総建築費の一定割合以上を輸入建材が占める必要が有る。」といったような明確な規定が存在 したのですが、政府の後押しが無くなってからは、各規定も形骸化し、定義も曖昧になってしまいました。
しかし、弊社では当時からも別の意味として「輸入住宅」という言葉を使用してきました。それは構造や建材といったハード面での輸入だけではなく、設計やライフスタイルといったソフト面での輸入にこそこだわってきたからです。
例えば、建具や床材などの建材を全て輸入して建てた「書院造り」や「数寄屋造り」の家屋を、はたして輸入住宅と呼ぶことができるでしょうか? 使っている材料が全て外国産であっても、意匠が日本固有のものであれば、それは「日本建築」と呼ぶべきではないでしょうか?
また逆に、江戸末期から明治にかけて来日した多くの外国人のためにわが国で初めて「洋館」と呼ばれる建築様式が生まれましたが、これらは全て日本国内の 建材を利用して建築されています。中には在来の軸組構法により、大工達が古くから受け継いできた技法で建てたものまで有ります。材料も技術も日本固有のも のを使っているにもかかわらず、なぜ現存するこれらの「洋館」は、どれも異彩を放っているのでしょうか?
理由は、卓越したデザインの妙であると言えましょう。私たちは、明治建築(洋館)こそが「輸入住宅」の原点であると考えています。そして、材料レベルの 輸入にとどまるのではなく、これらの歴史的・文化的建造物と同様、意匠の審美性や住む人の快適性までをもそっくりそのまま「デザイン」として輸入した住宅 創造を目指しています。
弊社のモデルハウスへ是非お越しください。欧米人らが求める意匠性と快適性が、きっと実感できることと思います。そして、私たちがこだわっている「本物の輸入住宅」の概念も、きっと御理解いただけることと思います。
輸入住宅のことなら、VDHにお任せください。
デザイナー 小野清一郎 2013年9月1日
リノベーション実例報告シリーズ第1弾 その1
今月から数回にわたり、弊社が昭和のマンションを北米建材でリノベーションした実例の紹介をしたいと思います。
物件は、山梨県の山中湖畔のリゾートマンションで昭和46年に竣工されたもので、間取りは1LDKです。この40年以上前のマンションを、ハワイのコンドミニアムのコンセプトでリノベーションしてみたいと思います。
まずは原状の玄関を御覧いただきましょう。
ごくごく普通の昭和40年代のマンションですが、床をタイルへ変更し、建具(収納扉)をシャッター(ガラリ)の収納扉へ変更し、手前の下駄箱を撤去します。居間への開口部には木製のダブルドアをインストールします。壁紙の色調もパステル系に変更してみましょう。
工事完了後の画像はこちらです。
だいぶ印象が変わりました。マンションですので玄関扉は変更できません。したがって既存の玄関扉を開いた瞬間、まるで別世 界へ瞬間移動したような、そんな不思議な感覚を楽しむことができるようになりました。古い昭和の扉が、ドラえもんの『どこでもドア』のように、ハワイのホ テルやコンドミニアムを訪れたような気分へと誘ってくれます。
輸入住宅のことなら、VDHにお任せください。
デザイナー 小野清一郎 2013年10月1日
リノベーション実例報告シリーズ第1弾 その2
昭和46年に竣工した中古マンションを、北米建材でリノベーションした実例報告の第2回目です。
下の二枚の画像は、前回お見せした玄関ホールの方を居間から眺めた様子です。掃出しサッシのある画面左側が南ですので、居間の東側から西側を眺めていることになります。
昭和の香りがプンプンしますね.右手奥にちらっと見える台所なんて、今ではなかなか見ることができないレトロな感じです。 そして掃出しサッシの上にあるボール型のブラケット照明は、これまた何ともいえないデザインです。同じような昭和40年代の別のリゾートマンションのリノ ベーションを手掛けたことが有りますが、やはり同様のボール型照明が玄関扉の上に設置されていました。まるで交番のようでしたが、当時の流行だったので しょうか? いずれにせよ、デザインとしても用途としても、まったく受け入れられない代物なので撤去させていただきました。
先月お伝えしたとおり、リノベーションのテーマは、『ハワイのコンドミニアム』です。建具だけでなく家具や照明器具も交換し、壁紙と役物の微妙な色調に配慮してデザインしました。 施工後の様子はこちらです。「居間」が「Living Room」に変身しました。
デザイナー 小野清一郎 2013年11月1日
リノベーション実例報告シリーズ第1弾 その3
昭和46年に竣工した中古マンションを、北米建材でリノベーションした実例報告の第3回目です。
前回お見せした居間の北側はこのように変化し、Living Roomへと変貌しました。建具を入れ替えるだけで、随分雰囲気が変わりますね。
同じく東側です。ハワイアンキルトをあしらってみました。ハワイ感がグッと増しました。
最後に掃出しのある南側です。ルーバーのバイフォールド(折戸)です。
アメリカではありふれた建材ですが、日本ではあまり目にすることが有りません。こんなアイテムもアメリカンな雰囲気を演出するのには大事です。
デザイナー 小野清一郎 2013年12月1日
リノベーション実例報告シリーズ第1弾 その4
皆様、新年明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
昨年の弊社は、「半沢直樹」から「ドクターX大門未知子」まで、ドラマの撮影協力に大忙しでした。果たして今年はどんな年になりましょうか。皆様にも御多幸な一年であることをお祈りしております。
さて、昨年秋より連載している、築40年以上のマンションをリノベーションした実例報告の第4回目です。今回は、和室をベッドルームへ改造したいと思います。
まず、原状を御確認ください。いたって普通の典型的な六畳の和室ですね。
襖を開き戸へ、畳をフローリングへ、そして障子をルーバーの折れ戸へ変更します。これだけで随分印象が変わります。
ここで、私のコーディネイトの小技を、上の画像で解説させていただきます。
リビングルームとベッドルームでは、全く異なる壁紙を使用しています。リビングルームは二種類の色違いで織目の壁紙、それに対しベッドルールは柄物の壁 紙にボーダーを配しました。一見して縁の無い壁紙同士ですが、同系色が混じり合う様に選択しています。こうすることで、二つの部屋には連続性が生まれま す。
ちなみに、実例報告1で紹介した玄関ホールの壁紙をリビングルームの一部にもボーダーとして使うことで、両者の間にも連続性が生まれているため、このユニット全体に連続性が保たれるように配慮しています。
それから、もう一つのポイントがファブリックです。コンフォーター(掛け布団)の柄とベッドルームのボーダーの柄とさらにリビングルームのソファの柄の三 つのモチーフをどれも薔薇にすることで、これらの連続性も演出しています。こうして、壁紙とファブリックの連続性をクロスオーバーさせることで部屋と家具 類などのアイテム群を密に一体化させることが可能です。
最後に、和室の内部に参りましょう。障子のアップがこちらです。ルーバーの折れ戸にしました。
収納部の押入もクローゼットになりました。こちらもルーバーの折れ戸に変更して、通気性を確保しています。本物件は別荘として御利用なので、不在中も湿気がこもらないようにしました。
いかがですか。かなりハワイのコンドミニアムに近づいた感じがしませんか。来月は、いよいよ最終章です。水回りの変貌を報告したいと思います。
デザイナー 小野清一郎 2014年1月1日
リノベーション実例報告シリーズ第1弾 その5
昨年秋より連載している、築40年以上のマンションをリノベーションした実例報告の最終回です。今回は、いよいよ水回り編です。
まずは国産のユニットバスを、VDH流にアレンジしてみましょう。原状は次の画像のとおりです。通常のホテルタイプのユニットバスですが、こうしてみるとユニットバスのデザインって、昔からあまり進化していませんね。
こちらが工事後の画像です。それなりに可愛い雰囲気に作り替えることができました。この造作では、新品のユニットバスを入れ替えるよりも安価に仕上げることができました。
そしてあの昭和レトロのキッチンを、改めてアップでよく見て頂きましょう。あの頃はこういう感じが普通でした。「三丁目の夕日」的な要素は何なのか、気づいた点を挙げてみると、
・フロアーキャビネットの低さ
・キャビネットの引手のデザイン
・レンジのダイヤルや引手のデザイン
・レンジフードのスイッチ形状とエンジ色のパネル
・水栓金具のデザイン
・紐スイッチが垂れ下がった蛍光灯
・蛍光灯下のオープン棚
・ステンレスのキッチンパネル
といったところが、古さを醸し出しているようです。さらにこの写真では、花柄の給湯ポットや炊飯器やオレンジ色の乾燥カゴなどがよりいっそうレトロ感を強調していますが、これらはキッチン自体の問題ではないので、無視して考えてください。
さて、工事後はこんな感じです。
御覧のとおり、キャビネットの扉やノブ、水栓金具のデザインは、とてもクラシックです。さて、40年後にこのキッチンはどのような印象になるでしょうか?想像してみてください。
恐らく、その頃最も時代遅れ感を醸し出すのは、レンジのパネル部分とレンジフードだと予測します。キャビネットや水栓金具はもともと古めかしいデザインな ので、よりアンティーク感をまとうようになると思います。しかし、レンジとレンジフードは現在のカタログ商品なので、40年後は、原状の昭和40年代のレ ンジらと同じ運命を辿ることになるでしょう。
私がいつもデザインに対して考えていること、それは、最先端でモダンなデザインは、そのときその一瞬が最先端なのであって、デザインの寿命は極めて短いの に対し、クラシックなデザインはいつまでもクラシックで、古くなる程アンティークやビンテージといった、昇華された価値を得ることができるということで す。
デザイナー 小野清一郎 2014年2月1日