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横浜市神奈川区の細田歯科医院様 1

今月から横浜市神奈川区の細田歯科医院様のケースを紹介したいと思います。この事例は、ちょっとしたリノベーションが大きな変化をもたらした好例として提示させていただこうと思います。

まずは物件の背景からお伝えします。現在の院長先生は、お父様の時代に建てられたクリニックを引き継がれたそうですが、その際、あるデザイン会社に設計とリノベーションを御依頼されたそうです。現場はビルの2階なのですが、入口から全面的に改装し、内部もスケルトンからリノベーションを行うといった力の入れようだったそうです。

ところが、完成し開業してから、どうも釈然としない思いが続いていたそうです。例えば、かなりの費用をかけて作り込んだ入口周囲は、本来はクリニックの看板ともいえる大事な部分なのですが、同じビルの1階に入居しているラーメン屋さんの派手な構えにすっかり埋もれてしまったとのこと。それにより新規の患者さんがなかなか増えないことが悩みの種でもありました。

さらに、院内のあちらこちらに使いづらい動線や危険な段差があり、患者さんの安全管理に非常に苦慮されていました。

そんな悶々とした日々を送っていたところ、弊社のことを知り御相談にお見えになりました。来月はこの物件の具体的な問題点を確認してみましょう。


デザイナー 小野清一郎 2020年3月1日


横浜市神奈川区の細田歯科医院様 2

先月から横浜市神奈川区の細田歯科医院様のケースをしています。今月はこの物件の具体的な問題点を確認します。まずは平面図を見てみましょう。

クリニックの入口から階段で踊場に上がると、オレンジの矢印で示した危険な出っ張り部が存在していました。通常はフラットな踊場にあえて、下足を脱ぐための上り框を設けていたのです。上り框自体は問題ないのですが、どうして階段を塞ぐように出っ張ってしまっているのが深い疑問でした。これにより低い方の踊場は狭くなるだけでなく、階段の有効幅も縮められてしまいました。手摺側が塞がれているのでなんとも歩行しにくい致命的な構造になっていたのでした。

次に上り框を跨いで踊場上段に上がると、そこには青い矢印で示した「スリッパ収納キャビネット」が鎮座しています。この棚の形状は三角形で使いにくいだけでなく、不要に巨大で上段の踊場を極めて狭くしていました。図面上でも狭くなった動線が分かると思います。

さらに階段を上がり、診療室に入るとそこにも信じられない設計ミスが待ち構えていました。赤い矢印の台形部分は基準となる床です。そこより図面上部(ソファや受付がある待合室)は上り框で一段高い床です。また、そこより左側のトイレ入口前の部分もやはり上り框で一段高い床となっています。つまり、赤い矢印部だけが低く、待合室からトイレに行き来する場合、高い床から一段低い床を踏み越えてまた一段上がることになります。この段差は、設計としては極めて危険で、致命的な欠陥と言わざるを得ません。

というわけで、クリニックの入口から診療室までの間に患者様が歩きづらかったり、つまづきそうな箇所があるばかりか、意匠面からも余計な出っ張りや不自然な床構成といった醜悪な見栄えが指摘できる状況でした。あまりにも杜撰な設計に私の驚きは相当なものでしたが、さらに酷いのがクリニックの顔ともいえる入口部分のデザインでした。来月はそれについて触れたいと思います。


デザイナー 小野清一郎 2020年4月1日


横浜市神奈川区の細田歯科医院様 3

今月も横浜市神奈川区の細田歯科医院様の事例報告を続けます。先月は、内装設計についての問題点を酷く非難させていただきましたが、今月はさらに論調を強めたいと思います。(笑)

建築デザイナーとしての私の信念は、ファサードがその建築物の命である、ということです。ファサードとはフランス語で「顔:フェース」のこと。つまり建築物の「顔」ということになります。人間だけでなくあらゆる構造体は「顔」がその象徴であることに異論はないと思いますが、さて、今回の物件について、そのファサードをみていただきましょう。


この物件では、診療室がビルの2階に入居しており、1階はラーメン屋さんが入居しています。診療室への入口(玄関)が白いシャッターで閉ざされたファサードということになり、提灯が下がっている部分がラーメン屋さんのファサードです。

診療室のファサード(玄関)には、青い囲み(ケーシング)が導入されましたが、ここでデザイナーはやってはいけないミスを犯しています。それは、意匠に凝るつもりだったのでしょうが、シャッターの左側と上側の二方しか囲まなかったことです。そして右側には細い横桟を3つほど追加し、オリジナルデザインとして終わらせています。

しかし、このことが右側のラーメン屋さんとの境界を曖昧にしてしまい、分離感を著しく弱めてしまったのです。せめて右側と左側の部材を入れ替えておくほうが良かったことでしょう。

結果として、人通りにあまり訴求することができず、住民への周知が弱くなっていたようです。このケーシングの問題は、正統的な三方廻しという手法をバッサリ切り捨て、斬新さを狙ったのでしょうが、完全に裏目に出てしまいました。ラーメン屋さんの押し出しに完敗しています。これでは商業施設としての意匠には不合格と言わざるを得ません。そして斬新さが不安定感や雑然感を醸し出してしまいました。

意匠性の醜悪さだけでなく機能性にも、隣の商業施設との分離・独立といった大事な機能を欠いてしまいました。

そして機能性についてもう一つ欠陥があることを指摘させていただきます。こちらを御覧ください。

道路からの段差が著しく、駐車場に使用する簡易スロープを設置してごまかしています。ここまで手抜き工事をされると、やれやれ、といった感じです。段差をよく観察すると、隣のラーメン屋さんよりも大きくなっていることが分かります。そしてどうしても理解できないのが、なぜ、自動車用のスロープを設置したのでしょうか・・・。深い謎です。否、不快な謎です。人が歩行する場所なので、せめて、踏み台にすべきではないでしょうか。

 私は、建築の三要素として「意匠・機能・性能」を定義しています。今回の事例では、建築の命とも言えるファサードに、「意匠」と「機能」の二つの要素において致命的な欠陥が生じていると結論づけました。来月に続きます。


デザイナー 小野清一郎 2020年5月1日


横浜市神奈川区の細田歯科医院様 4

今月も細田歯科医院様の事例報告を続けます。今月は内装の修繕工事の様子を御覧いただきます。

まずは入り口から待合室へ至る階段の踊場部分です。オレンジの矢印と丸印で示した踊場後半部は、赤い丸印で示した踊場前半部より一段高くなっています。高いだけならまだしも、赤い部に不要に迫り出しています。この状態だと、手摺の機能が踊場の手前で絶たれてしまい、動線の不整化が生じます。

また、青い矢印が示す「スリッパ収納キャビネット」も過剰に大きく、動線を疎外しています。オレンジで示した踊場後半部が狭小化しています。困ったものです。

そこで、スリッパ収納キャビネットと踊場後半部を思い切って撤去しました。これで踊場は元々の姿に戻ったことになります。

どうですか? 断然、スッキリしたのが実感できるのではないでしょうか。工事内容としては、先代のお父様が御開業された当時の状態に回復しただけです。ということは、お施主様が依頼したデザイン会社の設計が改善どころか改悪を及ぼしていたことにほかなりません。階段の設計を一つとってみてもこの有様ですので、このデザイン会社の技量は推して知るべしかもしれませんが、それにしても酷すぎる、というのが私の実感です。

来月は診療室の改善工事を紹介します。


デザイナー 小野清一郎 2020年6月1日


横浜市神奈川区の細田歯科医院様 5

今月は、細田歯科医院様の診療室の改修工事についてです。まずは問題点をもう一度確認しましょう。生憎、改修前の画像を撮影し損なったので、図面で説明します。下の図面の赤い斜線部は、床の高さが20センチメートル下がっているのです。

つまり待合室のソファに座っていた人がトイレに行く際は、赤い斜線部で一段下がり、トイレの直前で再び一段上がらなければなりません。歩く上で非常に不便であるばかりか、落とし穴のように踏み外したりする危険性も孕んでいます。これは致命的な設計ミスと言えるのではないでしょうか。

ビルの居室では、給排水等の配管を取り回す関係で床を底上げしなければならない場合があります。今回の物件も、本来の床の高さからトイレの床と診療室の床を上げなければならなかったために起きた不具合です。

そこで私は、ごくごく普通の「上り框」に設計し直しました。下の画像が改修後の様子です。

待合室から眺めた様子がこちらです。トイレまで同じ高さの床を歩行して到達できるようになりました。

今回の物件は、奇を衒ったデザインが機能性をことごとく破壊した好事例と言えます。来月からは外部の改修についてお伝えしていきます。


デザイナー 小野清一郎 2020年7月1日


横浜市神奈川区の細田歯科医院様 6

引き続き細田歯科医院様の改修工事の報告です。今月は外部、それも店舗入口の回収についてお伝えします。

まずはもう一度、工事前の様子を確認してみたいと思います。

入口周囲を囲む青いケーシングが、左側と上側の二方向しか設置されていないため、どうしても右隣のラーメン屋さんとの連続性が残ってしまい、歯科医医院自体の独立性が損なわれてしまっています。この点に関しては、お施主様から「とにかく右隣のラーメン屋さんばかりが目立ってしまい、存在感が薄いので、歯科医院が存在していることをもっと主張するようなデザインをして欲しい」と依頼されました。

また、右側には三本の横線がアクセントとして使われていますが、果たしてこのデザインもこれでよいものか、議論の余地がありそうです。

さらに安全性の観点から大問題なのが、道路からの大きすぎる段差が挙げられます。この大きな段差を緩和しようと、駐車場様の簡易スロープを設置していますが、最終的には姑息的な手段で終わってしまっています。

そこで私からは、独立性の確保とアイキャッチ性の向上について次の二つの提案をさせていただきました。

まずは入口周囲のケーシングを、セオリーどおり三方に廻すこと。そしてシャッターには歯のイラストを入れ、シャッターが閉じている間も歯科医院の存在をアピールすること。

というわけで設計については、次のようなプレゼンさせていただきました。

次の画像は工事途中のものですが、入口周りはこのような納まりとしました。

右隣のラーメン屋さんからしっかり分離することで、独立性が得られました。また、シャッターを閉じているときにも、歯科医院の存在がアピールできるようになりました。

来月は、さらに重要な問題である段差の改修について報告いたします。


デザイナー 小野清一郎 2020年8月1日


横浜市神奈川区の細田歯科医院様 7

先月の続きとして横浜市神奈川区の細田歯科医院様の入口工事の最終報告です。まずは三方に廻したケーシングの脚部にプリンスブロックという装飾を施しました。現状では青いパネルが床まで届かず、寸足らずな仕上がりだったので、この装飾で床面との一体感と安定感を演出しました。

次に大問題の段差ですが、一段増やして段差を緩和しました。

歩道から低めの段差2段で建物内に入ることが可能になりました。患者様からも好評だそうです。

御開業されてからずっとお悩みだったことが解決し、お施主様からは大変に喜ばれました。その結果、ビルの屋上看板のデザイン変更工事を追加で承ることになりました。来月は看板のデザインについて報告させていただきます。


デザイナー 小野清一郎 2020年9月1日


横浜市神奈川区の細田歯科医院様 8

これまで横浜市神奈川区の細田歯科医院様の修正工事の報告をして参りましたが、お施主様から屋上の看板もデザインして欲しい、との御要望が寄せられました。

ただし、お父様の代から使用されているロゴを使用するという条件が付帯していました。こちらが先代から受け継がれたロゴです。

そこで、ロゴはそのまま使用し、背景として可愛い子供が歯磨きをしている写真を採用しました。

設置した状況がこちらです。

そばを通る京浜急行の車両からもよく見え、とても満足しました、とのお言葉をいただきました。これで無事竣工、と思いきや、お施主様から、看板の効果から患者さんが増えたので、3階に拡張したい、との御相談が寄せられました。結局、引き続き3階の拡幅工事に移行することとなりました。来月からは、3階の全面改装工事の様子を報告いたします。


デザイナー 小野清一郎 2020年10月1日


横浜市神奈川区の細田歯科医院様 9

先月までお伝えしていた横浜市神奈川区の細田歯科医院様の事例ですが、その後、患者様が増えたため、診療スペースを3階へ増床したい、という御相談を受けました。

3階はもともと先代のお父様が診療室として使用していたそうですが、お施主様である息子様は2階で御開業したため、まったく使用していないスペースとのことでした。

こちらは3階の旧診療室の入口ドアです。先代の扉表示がそのまま残っていました。

診療室内の様子です。長らく倉庫として使用されていました。設備の仕様は、「昭和」を感じさせる印象です。




お施主様と相談した結果、原状は全て解体撤去し、スケルトンの状態からビルドアップしていくことになりました。


デザイナー 小野清一郎 2020年11月1日


横浜市神奈川区の細田歯科医院様 10

横浜市神奈川区の細田歯科医院様の事例ですが、先月お示しした原状を早速解体撤去いたしました。



毎度のことですが、既存のトイレだけは工事関係者が仮設トイレとして使用できるよう、あえて残しておきます。

来月からは2021年。引き続き工事の様子を伝えていきたいと思います。

今年はコロナで始まりコロナで終わりそうですが、来年こそは感染が収束して健やかな年になることをお祈りしています。今年一年、御愛読、誠にありがとうございました。


デザイナー 小野清一郎 2020年12月1日


横浜市神奈川区の細田歯科医院様 11

新年、明けましておめでとうございます。新しい年が始まりましたが、当ブログは昨年から引き続き横浜市神奈川区の細田歯科医院様事例を紹介して参ります。

昨年は、解体が完了しスケルトンとしたところまで紹介させていただきました。今月は間仕切りの様子をお伝えします。

まずは間仕切りの骨組みとして軸組していきます。

次に石膏ボードを軸組に貼っていきます。

今回の事例で、私が意匠にこだわった部分はこちらです。「スキップフロア」という手法を応用しました。スキップフロアは、数段の階段を室内に設け、連続する部屋の床の高さにあえて変化を持たせる設計手法です。

バリアフリーが標準化している昨今では、あまり見かけなくなった設計なのですが、今回の現場では、水を多量に使用する歯科診療室とバスルームについてはそれなりの床下配管を設置しなければならないので、どうしても躯体の床面からこれらの部屋の床を浮かせなければなりません。

そこでスキップフロアを応用することで、水を使用しない他の部屋との床高さの差異を解消することにしました。こうすることで水を使用しない部屋の天井高を高く確保できるわけです。

そして階段部分のデザインもシンメトリーを追求し、美しい仕上げを目指しました。私自身も完成を楽しみにしている箇所です。


デザイナー 小野清一郎 2021年1月1日


横浜市神奈川区の細田歯科医院様 12

横浜市神奈川区の細田歯科医院様がいよいよ大詰めです。

間仕切りができた段階で、窓を二重サッシュ化しました。すぐそばに京浜急行が走っていて騒音を解消したいとの要望にお応えました。

クロスと床張りも進めます。



私がこだわったスキップフロア部もだいぶ仕上がってきました。

こちらは入口入ってすぐの階段脇に設置した手摺です。

同じ仕様のパーテーションを診療台と診療台の間に設置します。

来月は仕上げの終盤をお伝えします。


デザイナー 小野清一郎 2021年2月1日